翌朝、義母の怒鳴り声と家への突撃に佳奈さんは追い詰められます。さらに夫の解雇も告げられて…。
義母の怒鳴り声で始まった朝
朝の光が、いつもより白く冷たく感じました。家じゅうが静まり返っています。やっぱりほとんど眠れないまま迎えた朝、私は冷めてしまったコーヒーを前にしてぼんやりしていました。
そんなときです。固定電話がけたたましく鳴りました。受話器を取ると、いきなり焦った義母の声が響きました。
「佳奈さん!ふみちゃんはどうしているの?2日間も連絡をよこさないなんて、おかしいわよね?」
義母のキンキン声に、胸が一気に締めつけられ、手のひらが汗ばみました。文也が毎朝送っているメールがこないことで、ついに何か起きていることに気づいてしまったようです。
「お義母さん…実は…」
言いたくはありませんでした。でも、もう隠すことはできません。
「文也さんは、おととい痴漢の容疑で捕まってしまって…」
一瞬の間のあと、受話器の向こうで空気が爆ぜるような音がしました。
「――はぁっ?痴漢?どういうことなの!?」
怒鳴り声は、受話器越しでも鼓膜を刺すほど鋭く、私は思わず肩をすくめました。
「お、お義母さん、私もまだ……」
「ちょっと待ってなさい、今すぐそっちに行く!」
一方的に電話は切れました。義母がわが家に突撃訪問してきます。私は慌てて、乱れた家の中を掃除しなければいけなくなりました。
玄関で浴びせられた理不尽な罵倒
しばらくすると義母の車が家の前に急停止し、ドアがバン、と乱暴に開きました。玄関の戸を開けると、義母は大声を出して詰め寄ってきます。
「どういうこと!ふみちゃんが痴漢なんてあり得ないでしょう?どうしてあなたが守ってやらないのよ!!!」
私は震えながら首を振りました。
「違うんです…文也さんが自分で容疑を認めていて…」
「そんなわけない!私が警察署に行くから!」
玄関先で踵を返す義母は、振り返って私にこう言いました。
「あなたは役所で離婚届を持ってきなさい。あなたみたいな女といるから、ふみちゃんがおかしくなったのよ」
そう吐き捨てるように言い、また車で去っていきました。あまりの剣幕に、私は足の力が抜けて座り込みました。佳文も涙ぐみ、「まぁま…」と私を見上げました。その小さな声だけが、私を現実に留める細い糸のようでした。

