追い打ちの解雇通知と崩れ落ちる心
そのとき、また電話が鳴りました。嫌な予感がしながら震える手で受話器を取ると、文也の勤務先でした。
「弊社としては、ご主人の痴漢は重大な不祥事と判断し、本日付で解雇とさせていただきます。詳細につきましては書面を郵送いたしますので…」
世界から音が消えました。
「あの、待ってください!急すぎます!」
「大変心苦しいのですが、決定事項ですので…」
通話は無慈悲に切られました。受話器を置いた瞬間、私はその場に崩れ落ちました。
「どうしたら……どうしたらいいの……」
何もかも失っていくようで、涙が止まりませんでした。泣きじゃくる私の背中で、佳文が小さく動き、私の肩に頬を押し付けてきました。その温かさだけが、唯一の救いでした。
きっとこれからもっと深い苦しみが続くのだと分かっていても、私はただ、佳文を抱きしめるしかありませんでした―――。
あとがき:怒涛の一日
義母からの厳しい言葉と、夫の解雇通知。佳奈さんは一日に二度も心の支えを失う状況に追い込まれました。理不尽な怒りをぶつけられ、生活の不安まで背負うことになり、精神的な負担は限界に近づいています。それでも、息子の存在だけが佳奈さんを現実につなぎとめています。彼女の物語は、さらに大きな試練へ向かっていきます。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています
記事作成: 光永絵里
(配信元: ママリ)

