災害時の「お金と法律」(第1回 新しい防災「知識の備え」を~災害復興法学の誕生)

災害時の「お金と法律」(第1回 新しい防災「知識の備え」を~災害復興法学の誕生)

弁護士たちによる無料法律相談活動が明日を照らす光に

私は2003年に弁護士として社会人キャリアをスタートしました。企業法務や事業再生等を多く扱う都心の法律事務所に勤務し、7年目となる2009年に、内閣府行政刷新会議の上席政策調査員として国へ出向する機会を得ました。行政改革や規制改革などの政策立案を担当していたその任期中におきたのが、2011年3月11日の東日本大震災でした。直後にテレビニュースで映し出された津波の映像は、今でも脳裏に焼き付いて離れません。まもなく原子力発電所事故がおき国の各省庁も部署を問わず大混乱状態となりました。しかし、弁護士である自分が、災害後の被災者救援や復旧・復興で役に立つ振る舞いができるとは想像できませんでした。弁護士として、国家公務員として、これまで経験してきたはずの知識や技能では、人の命を救うことはできないと思ったのです。

ところが、災害直後から弁護士たちは被災地に赴き、また全国の弁護士会等が電話窓口を設置し、被災者向けの無料法律相談活動を始めていました。東北地方や東日本太平洋側を中心に、1か月もしないうちに数千件の相談が積み重なりました。弁護士が聴き続けていた被災者の声は、生活再建を切望しながらも、未来を見据えることができないという悲痛な叫びでした。

被災後の生活を支える法律や制度がある!

被災された方の絶望や焦燥をすべて解決し癒しきることはできないかもしれません。しかし、生活再建へむけて未来を向き、一歩でも先へ踏み出してほしいと願いながら、弁護士たちは、被災者の生活再建に役立つ情報や知識を伝え続けていました。医師、自衛隊、消防隊などのように直接命を救うことはできずとも、助かった命を繋ぎ生活再建を助けるという役割が弁護士にはあったのです。写真:PIXTA

何もかも失い、絶望の淵にある被災者が一歩を踏み出すためにぜひ知っておいてほしい最初のキーワードは「罹災証明書(りさいしょうめいしょ)」です。罹災証明書は、災害時における自宅の損壊程度を証明するもので、被災者の申請に応じて市町村が発行することになっている書面です。被災者が孤立せず行政機関と繋がるきっかけにもなり、被災後の希望の第一歩と位置付けられるでしょう。この知識を知っていると知らないとでは、心のありようは大きく違うはずです。東日本大震災をきっかけに、災害対策基本法に基づく制度になりました。

大きな災害で自宅が全壊等してしまったような場合には、その程度に応じて最大300万円の被災者生活再建支援金という給付金を受け取ることができます。1995年1月17日におきた阪神・淡路大震災をきっかけに立法化に至った、被災者生活再建支援法という法律に基づく制度です。

大きな災害でもし家族が災害によって亡くなってしまった場合や、行方不明となってしまった場合には、その家族が250万円または500万円の災害弔慰金を受け取ることができます。1967年に山形県と新潟県を中心におきた羽越豪雨をきっかけとして作られた、災害弔慰金法に基づく見舞金制度です。

住宅ローンをはじめ個人の借金が残っているが、災害が原因でその支払いができなくなったという被災者の声は過去のどの災害でも非常に多くありました。このような場合は、東日本大震災をきっかけに誕生し、現在は「自然災害債務整理ガイドライン」と呼ばれる災害救助法適用時の債務整理のルールの活用を促すことが有益です。

法律といえば、ルール違反に対して罰則等の制裁を加えるものというイメージを持つ方がほとんどではないでしょうか。しかし、法律は、私たちを助けてくれる支援の根拠でもあるのです。災害が頻繁におきる日本において、私たちは支援の根拠となる法律を、平時から「知識の備え」として知っておく必要があるのではないでしょうか。

配信元: 防災ニッポン