公園で祖母と父を見かけた美鈴。声をかけようと近づいたところ、彼らの会話が聞こえました。「迫真の演技だった」「うまくいったな」などの言葉から、お年玉窃盗疑惑がでっちあげだとわかり―――。
怒りを父と祖母にぶつけた
「ねえ、一体どういうこと?」
震えながら、背後から父と祖母に声をかけた。ハッと振り向いた父と祖母は、私の登場で顔を真っ青にする。
「み、美鈴…」
引きつった表情の父を睨みつけた。
「噓つき!私とお母さんからお金をだまし取ったってことだね」
あまりにも浅ましい事実だった。2人は協力して、ありもしないお年玉の紛失を騒ぎ立て、困った私や母からお金を引き出したのだ。だから警察にも届け出なかったし、認知症のための相談窓口にも行かなかった。これが実の父親と祖母が企てたというのだから情けない。
私はこっそりと証拠を残すべく、カバンの中でスマホのボイスレコーダーアプリを起動させていた。
「お年玉がなくなったの、全部でっちあげだったんだね」
「聞いてたのかよ、まあ、ちょっとしたドッキリみたいなやつだろう」
「私の老後資金が足りなくてね、光彦に相談したのよ。面白そうだから乗っかっただけよ、冗談、冗談」
笑いながら言い訳する2人は、悪いことだと感じていないようだ。しかしこれは明らかに犯罪に近しい行為、詐欺や盗難にあたるのに。
「絶対に許さないよ」
最後にはそう締めくくり、呆然とする彼らを置いて母の元へ向かった。
真実を母に知らせた
母とスマホで連絡を取り、近くの喫茶店に行き話をした。真相を告げた時、母はもちろんすぐには信じなかった。しかしボイスレコーダーアプリに録音された会話を聞き、表情を強張らせる。音源が終わる頃には、唇を噛んでいた。
「呆れたものね…。もうお父さんたちにはうんざりだわ」
母は、そっと語りだす。父と結婚してから、どれだけ自分が耐えてきたのかを。転職と酒ばかりの父。収入が不安定だったので、母は仕事と家事を必死に両立した。それなのに昔ながらの亭主関白ぶりを発揮し、また姑からの嫁いびりも見て見ぬふりどころか、祖母の肩を持つ。うなだれる母に私は告げた。
「お母さん、もう家を出ちゃいなよ。私たち家族と一緒に暮らそうよ」
それは熟年離婚への後押しだった。母は今年60歳。もうすぐ定年退職を迎える。1つ年上の父はすでに退職しており、家でだらだらしてるだけ。そんな父を退職後も母が世話し続ける必要はない。
「ミノルさんは嫌じゃないかしら」
婿の心配をする母はやっぱり遠慮深い。不安を払うように、強く母の手をにぎる。
「大丈夫、実は以前から少し相談してて、ミノルもお母さんならいいって」
私の言葉は大きな力になったようだ。そして母は、予想以上の行動力を見せたのだ―――。

