
波瑠と川栄李奈がダブル主演を務める連続ドラマ「フェイクマミー」(毎週金曜夜10:00-10:54、TBS系)が10月10日(金)から放送開始となる。それに先立って、TVerでは波瑠が過去に出演したドラマ6作品が無料配信中だ。今や国民的女優の一人となった波瑠の魅力を代表作でおさらいする。
■“国民的女優”になる未来を予感させたキャリア初期の代表作「恋空」
波瑠は、中学1年の時にプロモーションビデオのオーディションに応募したのがきっかけで、芸能界入り。2007年からはティーン向けファッション雑誌「セブンティーン」の専属モデルを務め、クールな姉御キャラで人気を博した。多くの人が女優としての彼女を知ったのは、2007年に公開された映画「恋空」ではないだろうか。
同作は新垣結衣演じる平凡な高校生の美嘉が想像を絶するような悲しい出来事をいくつも経験しながらも一途に愛を貫こうとする純愛ストーリーで、波瑠は美嘉の親友・アヤを好演した。波瑠といえば、ショートヘアがトレードマークだが、当時はロングヘア。メイクもギャル系で今とは大きく印象が異なる。
映画は興行収入39億円のヒットを記録し、翌年にドラマ化もされた。波瑠はドラマ版にもキャストの一人に名を連ね、美嘉の恋人であるヒロの元カノ・咲を演じている。映画では高校生らしいピュアな演技が印象的だったが、咲はヒロを忘れられず、美嘉に卑劣な嫌がらせをする役どころ。しかしながら、単純な悪役ではない。咲の激情の根っこにある若さゆえの未熟さや心の弱さを波瑠は明確に表現しており、その後、国民的女優となっていく予感をすでに漂わせていた。
■ピュアすぎて狂気!自己中なヒロイン役で新境地を開拓
以降、映画「山形スクリーム」(2009)、「マリア様がみてる」(2010)、「潔く柔く」(2013)、ドラマ「スイッチガール!!」(2011、フジテレビ系)、「BORDER 警視庁捜査一課殺人犯捜査第4係」(2014、テレビ朝日系)、「ごめんね青春!」(2014、TBS系)など、波瑠は急速に出演作を増やしていく。
女優としての大きな転機は2015年。NHK連続テレビ小説「あさが来た」(NHK総合)で2,500人を上回る応募者の中からヒロイン・あさ役を勝ち取ったのが、当時24歳の波瑠だ。清涼感あふれるビジュアルはもちろんのこと、女性がまだ社会の表舞台に出ることが少なかった時代に実業家として身を立てたあさの生涯をエネルギッシュに演じた波瑠の陽のパワーが日本の朝を元気にしていた。
それだけに、「あなたのことはそれほど」(2017、TBS系)で波瑠が見せたダークな一面に衝撃を受けた人も多いのではないか。波瑠演じる主人公の美都は夫がある身でありながら、中学時代の同級生で初恋の人である有島と不倫関係に陥る。普通ならば、夫に対して罪悪感を抱くものだが、美都の場合は全くそれがない。どこまでも自己中心的で、好きという感情だけで突っ走っていく。ある意味、純粋。ピュアが行き過ぎて、傍目から見ると理解不能で不気味という、かつてないヒロイン像を波瑠が体現していた。
■シゴデキだけど不器用な役がハマる等身大の演技が魅力
「あなたのことはそれほど」で演じた美都は自分のパートナーの近くにはいてほしくない女性だったが、波瑠のキャリアの中ではむしろ例外で、どちらかといえば同性から支持される役柄が多い印象だ。2018年には「未解決の女 警視庁文書捜査官」(テレビ朝日系)で鈴木京香と刑事役でバディを組んだ波瑠。彼女が扮する朋は、柔術に長けた肉体派の熱血刑事だ。考えるよりも行動が先に出てしまうために空回りしてしまうこともしばしば。でも一生懸命で、応援したくなる主人公だった。
「#リモラブ 〜普通の恋は邪道〜」(2019、日本テレビ系)で波瑠が演じた美々もそう。美々は“鐘木パルプコーポレーション”、通称“カネパル”の産業医。医師としては優秀だが、社員たちの健康を思うがゆえについ口うるさく注意してしまい、周囲との軋轢を生んでしまう。そんな美々がゲームを通じて出会った“檸檬”に恋をし、価値観の違いに直面しながら人との関わり方を学んでいく物語。
美々の生真面目がゆえに逆にユーモラスな職場での顔と、好きな人からのメッセージに一喜一憂する普通の女の子と変わらない顔を、波瑠が巧みに演じ分けており、そのギャップに心を射抜かれる視聴者も少なくなかった。知的なオーラを持つ波瑠は仕事ができて自立した役柄が似合う。その一方で不器用なところもある女性を、いつも波瑠は等身大で演じているから、同性から憧れと共感を呼ぶのだろう。
■「フェイクマミー」では順風満帆なエリート役を!
そんな波瑠が出演するTBS系金曜ドラマ「フェイクマミー」は10月10日スタート。東大を卒業し、大手企業に就職した順風満帆なエリートだった花村薫(波瑠)が、転職の面接で出会った元ヤンキーの社長・日高茉海恵(川栄)から娘・いろはを名門私立小に入学させるため、自身に成り代わって面接に行くよう頼まれることから始まる物語だ。
波瑠は自身の役柄について、「お勉強ができて仕事もできる、けどどこか不器用なキャラクターなんじゃないかなと思っています」と語っている。これは、波瑠の真骨頂とも言えるお芝居が見られるのではないか。期待して待ちたい。
■文=苫とり子

