「重度知的障害」とはどのような状態?原因や支援内容も解説!【医師監修】

「重度知的障害」とはどのような状態?原因や支援内容も解説!【医師監修】

重度知的障害とはどのような状態なのでしょうか。
知的障害のなかでも重度にあたる方は、言葉の理解や表現が難しく、日々の生活には他者の支援が必要な場面が多くあります。

この記事では知的障害の程度による区分や重度知的障害の原因、診断までの流れ、また学齢期に受けられる学校での支援や、成人後の福祉サービスの内容も解説します。

前田 佳宏

監修医師:
前田 佳宏(医師)

島根大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院精神神経科に入局後、東京警察病院、国立精神神経医療研究センター、都内クリニックにて薬物依存症、トラウマ、児童精神科の専門外来を経験。現在は和クリニック院長。愛着障害やトラウマケアを専門に講座や情報発信に努める。診療科目は精神神経科、心療内科、精神科、神経内科、脳神経内科。 精神保健指定医、認定産業医の資格を有する。

重度知的障害の概要

重度知的障害の概要

知的障害の程度による分類を教えてください

現在の日本において、知的障害の統一された定義はありません。障害者福祉法や各省庁がそれぞれ定義や見解を示しており、いずれにも共通するのは以下の3点です。

発達期までに知的機能の遅れや障害がみられる

日常生活や社会生活の適応能力が不十分である

何らかの配慮や支援が必要である

つまり知的障害がある方は、知的な遅れがあり日常生活や社会生活において支援が必要な状態にある方といえます。

知的障害は程度に応じて4つの区分に分類されます。

以下の表は厚生労働省が公表している知的障害の程度による区分です。厚生労働省の区分は実態やニーズの把握や統計調査を目的として作成されています。

この記事では、厚生労働省の区分に基づいて解説します。

厚生労働省が公表している知的障害の程度による区分
『知的障害児(者)基礎調査:調査の結果』(厚生労働省)(2025年8月3日に利用)をもとに筆者作成

この区分は、知的指数(IQ)だけでなく、日常生活の自律度や社会生活の適応力から総合的に評価して判断されます。

例えば、IQが低くても、本人の生活能力が高く自立した生活が送れている場合には、障害の程度が1段階軽い区分に判断されることがあります。逆に、IQが高くても日常生活や対人関係などに困難があれば支援が必要とみなされ、障害の程度が重く判断されることもあります。

なお、厚生労働省による区分はさまざまな支援を受けるために必要な療育手帳における知的障害の区分とは一致しません。療育手帳では、A(重度)とB(軽度)などに分けられます。療育手帳での区分は、福祉サービスの利用や相談支援を受けるために分類されています。

重度知的障害とはどのような状態ですか?

重度知的障害とは、成人期に知能の発達段階がおよそ3歳から5歳程度で、日常生活、社会生活の場面では個別の支援が必要な状態とされています。

具体的には、読み書きは難しいですが、簡単な会話はできます。生活習慣になっているのであれば言葉での指示を理解し、身振りや短い言葉で意思を表すこともできます。

ただし、上記はあくまでも一例で、人間にそれぞれ個性があるように、知的障害の現れ方にも個人差があります。

重度知的障害の原因を教えてください

知的障害のある方が生まれる確率は人口の約1〜3%です。知的障害の原因は主に遺伝的要因と後天的・環境要因、生理的要因に分けられます。

遺伝的要因は、染色体異常や遺伝子の変異などがあげられます。ダウン症候群やメンデル遺伝病、脆弱X症候群などがあり、胎児期から発達に影響が出ます。

後天的・環境要因は、母親の妊娠中や周産期、出生後の感染症や怪我などによって生じる知的障害の原因を指します。

生理的要因は、明確な疾患や外傷がなく知的水準が低いケースを指します。つまり原因は不明ですが先天的に知的障害がある状態です。

かつて、知的障害の多くは生理的要因と考えられてきました。しかし現在では遺伝学の進歩により原因の解明が進み、遺伝的要因の割合も多いことが明らかになっています。

信州大学医学部附属病院遺伝子医療研究センターによる研究では、知的障害のある方の約43%に遺伝的な原因が認められました。特に重度知的障害の多くは遺伝的要因が関与していると考えられています。

ただし知的障害が必ずしも親から子に遺伝するのではありません。遺伝子は親から子へ受け継がれる場合もあれば受け継がれない場合もあります。また遺伝子が突然変異を起こすこともあります。

重度知的障害の検査と診断の流れ

重度知的障害の検査と診断の流れ

重度知的障害が疑われる場合は何科を受診しますか?

重度知的障害は、幼少期から兆候がみられることがほとんどです。幼児期や学童期に知的障害が疑われる場合には、小児神経科や児童精神科を受診します。
一般的な小児科には、知的障害の診断に対応できる医師が在籍していない場合もあります。ただし、発達外来や発達相談外来を設けている小児科であれば、知的障害が疑われるお子さんの診療を行っていることがあります。

自宅の近くに該当する医療機関が見つからない場合には、かかりつけの小児科や、地域の役所に相談するとよいでしょう。

重度知的障害と診断されるまでの流れを教えてください

知的障害の診断は、いくつかの段階を経て行われます。
まずは保護者への聞き取りとお子さんの行動を観察をして発達状況を確認します。そのうえで必要と判断されると、発達検査や知能検査の日程調整を行います。

診断確定に向けては、専門医による発達評価や発達検査、知能検査が行われます。検査では、子どもの能力や特徴を客観的に把握して知的障害の有無や程度を診断します。

最終的には、診断結果を保護者に説明します。さらに支援の必要性と保護者の希望に応じて療育や特別支援教育、福祉制度の活用など、今後の支援方針についても話し合いをします。

病院ではどのような検査が行われますか?

医療機関では、問診と知能検査や発達検査と呼ばれる簡単なテストを行います。代表的な検査は以下のとおりです。

田中ビネー知能検査V
2歳から成人を対象とした知能検査で、日本の文化や言語に即した内容で構成されています。

ウェクスラー式知能検査
幼児版(WPPSI)では2歳6ヶ月〜7歳7ヶ月、児童版(WISC)では5歳〜16歳11ヶ月までが対象です。言語理解、知覚推理、作業記憶、処理速度などの複数の指標から知的機能を総合的に評価します。

新版K式発達検査
対象年齢は主に0歳から13歳で、乳幼児期かの発達の偏りや遅れを3領域で評価します。

配信元: Medical DOC

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