糖尿病でもインプラントはできる?基準やリスク、注意点を解説します

糖尿病でもインプラントはできる?基準やリスク、注意点を解説します

糖尿病の患者さんがインプラント治療を受けるための血糖値コントロール法

糖尿病の患者さんが血糖値をコントロールする方法はさまざまです。大切なのは、現在の状況をご自身で理解し、医師と歯科医師が連携を行い、血糖値をコントロールすることです。

HbA1c値の基準

安全性の高いインプラント手術を受けるためには、血糖コントロールの状態を示すHbA1cという数値がとても重要です。厚生労働省が公開している『口腔インプラント治療指針2024』では、手術を受けるための目安として、空腹時血糖が140 mg/dL以下、尿中ケトン体が陰性、そしてHbA1cが6.9%(NGSP値)未満であることが示されています。ただし、これを超える場合は、主治医や糖尿病専門医と連携しながら慎重に判断する必要があります。

参照:『口腔インプラント治療指針2024』(広域社団法人日本口腔インプラント学会編)

糖尿病性ケトアシドーシスの有無

糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)というのは、インスリンが極端に不足して血糖値が高くなり、身体の中にケトン体という物質が溜まってしまう、とても危険な状態です。厚生労働省のガイドラインでも、インプラント手術を受けるには空腹時血糖が140 mg/dL以下で尿中ケトン体が陰性であることが条件とされています。もし尿や血液からケトン体が検出されたら、手術は延期しなければなりません。

血糖値をコントロールする方法

血糖値を安定させるためには、内科の主治医と歯科医師の連携や、食事と運動の見直し、生活習慣の改善や血糖値のモニタリングが必要です。

治療を始める前に、内科の主治医に今の血糖値のデータやお薬の内容を共有して、手術の前後でお薬の飲み方を調整してもらう必要があります。医科と歯科が連携することで、より安全に治療を進められます。

さらに、規則正しい食事とバランスのよい栄養は、血糖値を安定させる基本です。全粒穀物や野菜、良質なたんぱく質を中心にして、食物繊維をしっかり摂ることで血糖値の急な上昇を防げます。適度な運動も大切で、筋肉が糖を使ってくれるのでインスリンの効きがよくなります。ただし、運動は主治医と相談しながら無理のない範囲で行い、低血糖にならないよう運動の前後に血糖値をチェックしておきましょう。

実は、歯周病の治療をするとHbA1cが0.3〜0.4%程度改善することがわかっています。お口の中の炎症が減ると、インスリンの効きがよくなります。毎日の歯磨きや歯間清掃、そして歯科医院でのプロのクリーニングを受けることが、血糖管理にもつながります。

タバコは歯周病にも糖尿病にも悪影響なので、禁煙は必須です。喫煙を続けていると血糖コントロールも難しくなってしまいます。十分な睡眠とストレスを溜めない工夫も、ホルモンのバランスを整えて血糖値の変動を抑えるのに役立ちます。お酒は適量にして、飲みすぎには注意しましょう。

また、血糖値のモニタリングも欠かせません。インプラント治療の前後は、血糖値やHbA1cをこまめに測って、数値の変化を把握しておくことが大切です。自己血糖測定器や持続血糖モニタリングシステムを使うと、1日のなかでの変動も見えやすくなります。測った結果は歯科医師にも共有して、治療のリスク評価に役立てましょう。

参照:『高齢者が抱える全身疾患と歯周病との関連』(日本老年歯科医学会雑誌)

糖尿病の患者さんがインプラント治療を受ける際の注意点

さまざまな専門的な視点で現在の状況をチェックすることで長期的な予後を見据えた治療を受けられる可能性が高くなります。

インプラント治療を決定する前に主治医へ相談し、指示を仰ぐ

糖尿病の方がインプラント手術を受けるかどうかは、歯科医師だけでなく、内科の主治医の先生と連携して検討しましょう。

日本口腔インプラント学会のガイドラインでも、主治医から検査データや病気の状態、お薬の内容を教えてもらって、身体全体の状態を総合的に判断することが推奨されています。特にHbA1cが8%を超えている場合や、糖尿病性ケトアシドーシスを起こしている場合は手術を延期して、内科での治療で血糖値を改善してから再度検討することになります。高血圧や心臓の病気、腎症などの合併症がある場合も、リスクが高くなるので慎重に進めましょう。

参照:『口腔インプラント治療指針2024』(広域社団法人日本口腔インプラント学会編)

歯周病の治療を行い、口腔ケアを徹底する

手術を受ける前に歯周病をしっかり治療して、口腔内を清潔に保つことは、インプラント治療を成功させるカギです。高血糖は歯周病のリスクを上げて、歯周病が悪化するとインスリンの効きが悪くなってさらに血糖値が上がるという悪循環が生まれてしまいます。歯周基本治療を行って、炎症を抑えて口腔内の細菌を減らします。

歯科衛生士の指導を受けながら、歯間ブラシやデンタルフロスを使って丁寧に歯を磨きましょう。プラークをしっかり取り除くことで、インプラント周囲炎や歯周病の再発を防げます。治療が終わってからも、歯科医院で定期的にクリーニングを受けて、お口の状態をチェックしてもらいましょう。来院の頻度は患者さんによって変わりますので、歯科医師の指導にしたがってください。糖尿病の方にとって、この定期検診はHbA1cを安定させるためにも大切な習慣です。

服薬中の内服薬・注射薬・サプリなどを歯科医師に共有する

糖尿病の治療では、血糖値を下げる飲み薬やインスリン注射のほかに、血圧を下げるお薬や脂質を調整するお薬など、たくさんのお薬を一緒に飲んでいることが多いです。

これらのお薬は、手術中の出血や感染のリスク、薬同士の相互作用に影響することがあります。インプラント治療で使う局所麻酔薬のなかには、血糖値を上げてしまうものもあるので、糖尿病の方には量を調整したり、別の麻酔薬に変えたりする場合があります。

飲んでいるお薬やサプリメントは全部、歯科医師に伝えてください。そして主治医の指示にしたがって、手術当日のお薬の飲み方やインスリンを打つタイミングを調整しましょう。特に、ステロイドや免疫を抑えるお薬、骨粗しょう症のお薬(ビスホスホネート製剤など)を使っている場合は、顎骨が壊死してしまうリスクがあるので、処方してくれている医師としっかり連絡を取って慎重に対応します。

配信元: Medical DOC

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