定位放射線治療の流れ
定位放射線治療は、精度の高さが求められるため、一般的な放射線治療よりも準備工程が多く、治療計画も綿密に行われます。
診察・検査
まずは放射線治療専門医による診察が行われます。症状・既往歴・これまでの治療内容などを確認し、定位照射が適応となるかを総合的に判断します。
その後、CTやMRIによる精密画像検査を行い、腫瘍の位置・形・大きさを詳細に把握します。脳や脊椎の病変の場合は、MRIが特に重要です。
治療時の誤差を最小限にするため、患者さんの体が動かないように固定具(頭部固定マスク・ボディフレームなど)を作成します。固定具は患者さんごとにカスタムで、数分〜10分程度で作製できます。これにより、毎回の治療位置を正確に再現できるようになります
治療計画
固定具を装着した状態で撮影したCT画像を基に、放射線治療専門医・医学物理士・放射線技師がチームとなり、治療計画(プランニング)を作成します。
腫瘍の輪郭(GTV)や治療すべき範囲(PTV)を医師が丁寧に描写します。
どの方向から、どれだけの線量を、何回に分けて照射するかを、専用コンピュータで最適化します。
定位放射線治療では1mm以下の精度が求められるため、周囲の重要臓器(脳幹・脊髄・食道・腸管など)への線量を極力抑えつつ、腫瘍には十分な線量が届くよう綿密な計算を行います。また、医学物理士が線量計算の妥当性をチェックし、機器の安全性確認(QA)を行ったうえで照射が実施されます。
治療
治療当日は、診察室ではなく照射室で行われます。固定具を装着し、治療台に仰向けになっていただきます。
照射前に位置照合(IGRT:画像誘導放射線治療)を行い、CTやX線で腫瘍の位置が治療計画どおりであることを確認します。数ミリ単位でずれている場合は台を微調整し、腫瘍に照射が正確に当たるよう調整します。
照射中は痛みや熱さは感じず、機械音だけが聞こえる程度です。
治療時間は1回あたり20〜60分で、病変の種類や大きさによって回数は1〜5回程度が一般的です。
多くの患者さんが外来で治療を受け、その日のうちに帰宅できます。
治療後
照射が終了すると、そのまま歩いて帰宅できます。入院が必要になることはほとんどありません。
副作用としては、軽度の倦怠感、吐き気、照射部位の皮膚の赤みなどが見られることがありますが、多くは数日〜1週間で自然に軽快します。体幹部では一時的に咳・胃部不快感が出ることもあります。
治療効果の確認のため、治療後3ヶ月〜半年ごとにCTやMRIで経過観察を行います。腫瘍はすぐに縮小するとは限らず、数ヶ月かけてゆっくり小さくなるケースも多いため、継続したフォローが重要です。
「定位放射線治療」についてよくある質問
ここまで定位放射線治療を紹介しました。ここでは「定位放射線治療」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
定位放射線治療とIMRTの違いについて教えてください。
木村 香菜(医師)
定位放射線治療とIMRTの主な違いは、治療の回数と線量集中度です。
定位放射線治療は、比較的小さな病変に数回の照射で高線量を集中させ、手術の代替にもなる治療法です。一方、IMRTは、腫瘍の形に合わせて放射線の強度を細かく変調させ、多方向から照射することで、正常組織への影響を抑えつつ、より広い範囲の腫瘍に適応できます。つまり、定位放射線治療は、「小さな病変に大線量を短時間で照射する」、対してIMRTは「複雑な病変の形に合わせ、オーダーメイド照射を時間をかけて行う」というような違いがあると考えて良いでしょう。
定位放射線治療は複数回行うのでしょうか?
木村 香菜(医師)
疾患により異なります。脳腫瘍では1〜3回、肺・肝臓・脊椎では3〜5回などです。体への負担を考慮して、分割回数を決定します。

