義母からの怒号と文也の解雇通知で孤立する佳奈さん。泣き崩れながらも、幼い佳文のために自立を決意し、保育園と仕事探しに奔走します。数日後、事務補助の仕事を得て新しい生活へ踏み出します。
義母の怒号と崩れ落ちる現実
夫の職場から解雇を告げる電話が切れたあと、世界から音が消えたように感じました。義母の怒鳴り声も、会社からの解雇通告も、全部まとめて頭の中でぐるぐる回っていました。受話器を戻した手が震えていました。膝から力が抜け、その場にぺたんと座り込んでしまいました。
「…どうしよう」
佳文が不安そうに、私の膝によじ登ってきました。その小さな手が、今の私が持っている唯一の現実のように思えました。どれくらいそうしていたのか分かりません。突然、玄関のチャイムが連打されました。
おそるおそる玄関の戸を開けると、そこには義母が立っていました。いつも整えられている髪は乱れ、目は真っ赤に腫れていました。
「佳奈さん、あんたのせいよ!!!」
玄関に上がり込んできた義母は泣き叫んでいました。
「ふみちゃんは痴漢なんてする子じゃないの!あんたがおかしくしたのよ!」
義母の顔は怒りと涙でぐしゃぐしゃでした。やがて義母は私をにらみつけました。
「佳奈さん、今すぐふみちゃんの人生から出ていきなさい」
「えっ…」
「離婚しなさい。そうじゃないと、文也は人生をやり直せないから。とにかく早く消えてちょうだい!」
叫び終えると、義母は立ち上がり、乱暴にドアを開けて飛び出していきました。
支えの喪失と、決意の芽生え
私はその場にしばらく座り込んだまま動けませんでした。膝が震え、指先が冷たく、心臓だけがバクバクと音を立てていました。やっとの思いでリビングに戻ると、佳文が不安そうにこちらを見ていました。
目が合った瞬間、堰を切ったように涙があふれました。
「ごめんね、ごめんね、佳文…」
小さな体を抱き上げると、佳文は何も分からないまま、私の首にぎゅっと腕を回してくれました。その温かさが、かろうじて私を現実に引き留めてくれていました。怒り狂った義母の姿を見た私は妙に冷静になり、今後のことを考えました。
家賃、食費、光熱費、携帯代…挙げればキリがありません。文也は勾留され、会社からは解雇を告げられ、義母は私を罵倒して帰っていった。私と佳文を支えてくれる“大人”は、もう誰もいません。
「……働かなきゃ」
声に出すと、ようやくその言葉が現実味を帯びました。

