“おそうざい”は毎日食べても飽きないことが大事
今までに100冊以上の料理本を出版しているという笠原さん。2004年に『賛否両論』をオープンしてから4~5年経った頃に、最初の本を出したそう。
「基本的には、僕は来た仕事は断らない主義なんですよ。特に最初の頃は、本を出せるって光栄じゃないですか。だから、すごかった年は月に1冊のペースで出していましたよ」
料理本でさまざまなおそうざいの提案をしてきた笠原さんが考える“おそうざいの定義”は、毎日食べても飽きないもの。
「白いご飯のおかずにもなれば、おつまみにもなり、余ったらお弁当にも入れられる。それでいて、冷蔵庫の中にあるものでパパッと作れる。そういうものだと思いますよ。『今日はおそうざいを作るぞ!』って気張って作るものじゃないと思うんです」
100冊以上も料理本を出しているため、毎年少しずつ改良を加えたり、自分の好みの変化を反映させたりして、同じ料理でもかなりレシピは変わってきているとのこと。
「私は進化を止めていない。だから、毎回買わなきゃダメなんですよ(笑)。笠原がどう攻めてくるか、その進化を見てほしいんでね。同じレシピだと思って舐めてもらっちゃ困るんですよ(笑)」

「笠原将弘のまた食べたくなるおそうざい」(マガジンハウス)
家庭のおそうざいは子どもから大人までみんなで食べるため、“ちょうどいいゾーン”を狙うことが大事だと考える。
「甘すぎると大人は嫌がるし、薄味だと子どもは物足りないってなるじゃないですか。だから、全員が食べておいしいところを僕はいつも狙っていますよ。そして、ビールのつまみにもなればご飯のおかずにもなるというね」
“素材ありき”な部分が和食の弱点
笠原さんが考える“和食の定義”は、その土地で採れる旬のものをシンプルに調理したもの。
「でも、そこが和食の弱点になっている部分もあると思います。上品な薄味で素材の良さを活かすので、そもそも素材が良くないとあまりおいしくないと感じることもある。あと、シンプルなものはごまかしが効かないでしょ。そこが難しいと言われるところかなと感じますね」
さらに、和食が世界で広がりにくい理由も“素材ありき”な点にあるという。
「フレンチや中華は、いろいろなスパイスやハーブや調味料などで新しい味を作っちゃう料理なんです。だから、世界中どこでも作れるんです」
ただ、これからは日本からわざわざ食材を取り寄せるのではなく、その国の食材をシンプルに活かす和食が世界では増えてくると笠原さんは予想する。
「ちょっと前までは“日本のものを再現する”という考え方だったから、ちゃんとした和食はできなかったわけです。わかりやすい天ぷらやすき焼き、あとは変わった海苔巻きの寿司とか。でもこれからは、海外で採れる日本にはない野菜をお浸しにするみたいな形になっていくと思いますよ」
ほかの国の料理のほうが難しいのに、和食を難しいと考える日本人が多すぎる、と笠原さんは嘆いていた。
「出汁を取らなきゃいけないとか、薄味で上品な料亭みたいな料理を作らなきゃいけないとかって、みなさん勝手に思い込んでしまっている。あと、昔の板前さんって怖そうじゃないですか。だから、僕は少しでも和食の敷居を下げるために、あえて砕けた感じにしているんです(笑)」
やらなくてもいいことをやらなくてはいけないかのようにイメージづけられている部分も多く感じられる。
「だから、僕は自分の本でも一貫して言っていますが、お店だからこそそういった作業はやるけど、家庭料理ではこんなことはやらなくていい。家庭では家にある調味料だけで作ればいいし、面取りとかもしなくていいんですよ」

