
松本幸四郎が主演を務める時代劇「鬼平犯科帳」シリーズの最新第7弾「鬼平犯科帳 兇剣」が、2026年1月10日(土)より時代劇専門チャンネル、時代劇専門チャンネルNETにて放送・配信される。
■長谷川平蔵(松本幸四郎)、親友・岸井左馬之助(山口馬木也)と再タッグ
本作は、時代小説の大家・池波正太郎の三大シリーズの一つとして知られ、累計発行部数3000万部を超えるベストセラー時代小説『鬼平犯科帳』を原作にした時代劇シリーズ。
最新第7弾「兇剣」では、山口馬木也が、シリーズ第1弾「鬼平犯科帳 本所・桜屋敷」以来の出演を果たし、長谷川平蔵(幸四郎)と親友・岸井左馬之助(山口)として再タッグを組む。また平蔵と旧知の仲の京都西町奉行所与力・浦部彦太郎役で内藤剛志や、大盗賊・高津の玄丹役で渡辺いっけいらがゲスト出演する。
そんな主演の幸四郎が登壇した本作の舞台挨拶が、12月9日にTOHOシネマズ日比谷にて実施された。
■「映画の大スクリーンだったら分かるかもしれない」
満席の客席の中、盛大な拍手で迎え入れられた幸四郎。挨拶とともに、本日スケジュールの関係で登壇できなかった山口のタオルを掲げた幸四郎は、「ちゃんと左馬之助の匂いがします」と冗談を飛ばし、会場を和ませる。
司会進行を務める佐野瑞樹アナウンサーが「タオルを持っていただきましたけれども、山口さんはシリーズの第1弾『本所・桜屋敷』以来の本作へのご出演でしたが、久々に共演されていかがでした?」と投げかけると、幸四郎は「お会いして、良い意味で何も変わらないことにうれしさがすごくありました。彼のスタンスと言いますか、マイペースさや、彼の世界観、色合い、匂いというものが何も変わっていなくて」と、主演を務めた映画「侍タイムスリッパー」が2024年に大ヒットしたことを経ても、山口自身は何も変わらないことに感動した様子。
そんな幸四郎だが、「ただ、今回の左馬之助の登場の仕方がね…。彼との再会の仕方が、ちょっとカッコよすぎませんか?」と会場に呼びかけ、その再会する登場シーンを振り返る。「彼はどこかに隠れて出るタイミイングを探ってたんですかね? 一番かっこいい場面を待ってて、『まだまだ…あ、そろそろ行くかな』って感じで(出てきたのでは?)」と平蔵の窮地に完璧なタイミングで現れた親友・左馬之助の登場の仕方に疑念を抱いている様子。
そして、「この映画の大スクリーンだったらその真相が分かるかもしれないので、ぜひもう一度見て、左馬之助が現れる前に、どこか木の陰とかでタイミングを見計らってる姿がないか確認していただきたいですね」とジョークを飛ばし、会場から笑いが巻き起こった。
■「時代劇だからこそ現代のお話よりも自由度が実は高い」
また佐野アナウンサーから「今年(2025年)は映画『国宝』が邦画実写歴代1位を記録するなど空前の大ヒットとなりました。『国宝』は歌舞伎という日本を代表するジャンルを扱った作品ですが、この『鬼平』も同じく日本を代表する時代劇というジャンルの作品ですね」と尋ねられると、歌舞伎界で生まれ育ち、日本を代表する歌舞伎役者となった幸四郎は「歌舞伎というものにこれだけ国内外問わず多くの方々に興味を持っていただけることは、素直にすごくうれしいですね」とコメント。
続けて、「時代劇は日本にしかないジャンルですので、『国宝』をきっかけにそういった日本ならではエンタメにも世界からこれまで以上に興味を持っていただけるようになるのかなと」と「国宝」の海外への影響と期待を明かす。
また国内の観客に対しては「時代劇というと少し距離を置いてしまう感じがあるかもしれませんが、時代劇だからこそ現代のお話よりも実は自由度が高いんです。今ではない時代を描くからこそ、僕たちが作ることができる。もちろん長谷川平蔵自身も実際にいた人物ですので、史実に基づいて描くのですが、それでも想像で大きく膨らませることができます」と持論を展開し、「そういったところが、時代劇にしかない面白さの一つだと思いますので、この『鬼平犯科帳』という作品にも興味を持っていただければと思います」と本作と時代劇の魅力を熱く語る。
■「(火野正平さんの不在の大きさは)常に感じている」
さらに、観客からの質問コーナーでは、「火野正平さんが現場にいらっしゃらない『鬼平』は、今回が初めてでしたよね。撮影現場で火野さんの不在の大きさを感じることはございましたか?」という質問に対して、幸四郎は「それはもう常に感じています」と即答。
続けて、「これは時間がどれだけ経つかということではないので、この大きく空いた穴は何十年、何百年経ってもずっと塞がりません。ただ、そこで立ち止まるわけにはいかないと思っています。改めてスタートしようという気持ちで、この作品に取り組みました」と亡き火野への特別な思いを吐露し、「『鬼平』は(火野さんと)一緒には前に向かって走っていますので。油断してたら(火野さんから)怒られそうだなと(笑)。後ろから突かれるんじゃないかと思いながらの現場です。そういう気持ちです。それは役者陣ももちろんそうですし、監督はじめ現場のスタッフの皆さんもそうです。だから、この作品ができたんだと思っています」と、これからもシリーズが続く限り、火野とともに「鬼平犯科帳」を歩んでいくことを明かしていた。
なお、本作の放送・配信に先駆けて、12月18日(木)までTOHOシネマズ3館(東京・日比谷、京都・二条、大阪・なんば)にて、劇場でしか見られない映像を加えた特別先行版が上映している。
取材・文=戸塚安友奈

