新時代の旗手から、伝統絵画に回帰!? アンドレ・ドランの珍しい「進化」 ~フォーヴィズム時代~

この時代の代表作

Landscape near Chatou (1904)

Landscape near Chatou (1904)Landscape near Chatou (1904), Public domain, via Wikiart.

翌年1905年にサロン・ドートンヌでフォーヴィズムが正式に誕生する直前の、重要な初期作品です。

シャトゥーはパリ近郊セーヌ河畔の町でドランの故郷でもあり、彼はこの身近な風景を新しい芸術表現の実験場としました。

技法面では、フォーヴィズムの特徴である大胆な原色使いが顕著に表れています。緑、青、赤、黄などの強烈な色彩が画面全体を支配し、風景の要素は単純化され、色彩の対比によって形態が表現されています。

木々や建物、空が現実とは異なる鮮やかな色で描かれ、ドランの主観的な感情や印象を反映しています。

自然を忠実に再現するのではなく、色彩そのものの力強さと感情的な表現を重視したこの作品は、20世紀初頭の革新的な芸術運動の萌芽を示す重要な絵画として美術史上高く評価されています。

Boats at Collioure (1905)

Boats at Collioure (1905)Boats at Collioure (1905), Public domain, via Wikiart Commons.

1905年の夏に制作した作品で、フォーヴィズムの代表作の一つです。

この年の夏、ドランはアンリ・マティスとともに南フランスの地中海沿岸の小さな漁村コリウールに滞在し、強烈な陽光と鮮やかな色彩に満ちた風景に刺激を受けて多くの作品を制作しました。この共同制作が、同年秋のサロン・ドートンヌでフォーヴィズムが誕生したきっかけとなりました。

技法面では、フォーヴィズムの特徴である大胆な原色使いが顕著に表れています。

港に停泊する漁船や海が、青、赤、黄、緑などの強烈な色彩で描かれ、現実の風景とは異なる色彩表現によってドランの主観的な感情や印象が反映されています。船や海などの形態は単純化され、色彩の対比によって画面に強烈な印象を与えています。

自然光や色を忠実に再現するのではなく、純粋な色彩そのものの力を解放したこの作品は、20世紀初頭の革新的な芸術運動を象徴する重要作として高く評価されています。

Portrait of Matisse (1905)

Portrait of Matisse (1905)Portrait of Matisse (1905), Public domain, via Wikiart Commons.

ドランの親友であり同じくフォーヴィズムの代表的画家であるアンリ・マティスの肖像画です。ドランのフォーヴィズム時代の代表作の一つとして知られています。

緑色の顔、赤い髪、青い影など、現実離れした色使いや、わずかな線と色面の組み合わせで表現された顔がフォーヴィズムの特徴を表しています。

The Port of Collioure (1905)

The Port of Collioure (1905)The Port of Collioure (1905), Public domain, via Wikiart Commons.

ドランがフォーヴィズムの画家として最も脂がのっていた時期の代表作の一つとして評価されています。

もともとの自然な形を尊重しつつも、力強い色彩を使った感情的に表現したこの絵は、20世紀初頭の革新的な芸術運動のシンボルになっています。

Mountains at Collioure (1905頃)

Mountains at Collioure (1905頃)Mountains at Collioure (1905頃), Public domain, via Wikiart Commons.

コリウールの山々を描いた絵です。とはいってもそこはフォーヴィズム。山の輪郭は単純化され、写実的な描き方とは違う方法で山が表現されています。

赤、青、緑、紫などの鮮やかな原色が画面全体を支配し、色彩のコントラストによって立体感が表現されています。

Fishing Boats, Collioure (1905頃)

Fishing Boats, Collioure (1905頃)Fishing Boats, Collioure (1905頃), Public domain, via Wikiart Commons.

コリウールの港に停泊する漁船を題材にしたこの絵は、大胆な色づかいと極限までシンプルに簡略化された形態が特徴です。

水面や空を表現するにも非現実的な色が使われていますが、これが却ってリアリティを生み出しています。

Vue de Collioure (View of Collioure) (1905頃)

Vue de Collioure (View of Collioure) (1905頃)Vue de Collioure (View of Collioure) (1905頃), Public domain, via Wikiart Commons.

コリウールは南フランスの小さな漁村で、ドランやマティスなどのフォーヴィズムの画家たちが頻繁に訪れました。

この作品はドランがフォーヴィズムの代表画家としての立場を確立する時期の作品として位置づけられています。

Charing Cross Bridge (1906)

Charing Cross Bridge (1906)Charing Cross Bridge (1906), Public domain, via Wikiart Commons.

有力画商のアンブロワーズ・ヴォラールに招かれ、ロンドンの街を描いたシリーズのうちの1つです。ロンドンのテムズ川とチャリング・クロス橋を描いています。

印象派の代表的な画家、クロード・モネも同じ場所を描いていますが、モネが光と大気の雰囲気を描き出そうとした一方で、ドランは力強い色づかいで感情的な表現を前面に打ち出しました。

橋や建物は幾何学的な形態で表現されています。キュビスムの先駆けともいえるかもしれません。フォーヴィズム時代のドランの代表作として知られています。

Effect of Sun on the Water, London (1906年頃)

Effect of Sun on the Water, London (1906年頃)Effect of Sun on the Water, London (1906年頃)

テムズ川の風景を描いた作品です。水面の反射や空の色彩が現実離れした色で描かれ、躍動感ある色づかいと構成が特徴です。

ウエストミンスター宮殿 (1906-1907)

ウエストミンスター宮殿 (1906-1907)ウエストミンスター宮殿 (1906-1907), Public domain, via Wikiart Commons.

数年前にクロード・モネがロンドンを描いた作品を発表し、ドランもその影響を受けていました。

しかし、モネとは違う表現技法で描かれた一連のロンドンシリーズは高評価を集め、ドランの代表作となりました。

まとめ

「なんとこれは…野獣 (フォーヴィズム) のようではないか!」と批評家に言わせたドラン。

しかし、このあと数年後には新たな表現に挑戦し、さらにその数年後には伝統的な表現に回帰していました。ドランの「古典回帰時代」は、後半の記事で解説します。

アンドレ・ドランの作品のうち、30歳以降に製作されたいくつかは国内の美術館で見ることができます。

一度ぜひご覧下さいね。

配信元: イロハニアート

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