フォーリンラブ ハジメさん夫婦の不妊治療体験「赤ちゃんをこの手に抱くまで夫婦の6年」

フォーリンラブ ハジメさん夫婦の不妊治療体験


男性不妊を公表し、奥様のミホさんと不妊治療を乗り越え、2022年に見事赤ちゃんを授かったハジメさん。
6年の治療期間には流産というつらい経験もありました。
それでも前を向いて、ミホさんと夫婦二人三脚で歩んだ不妊治療の道のりをたどります。

フォーリンラブ ハジメさん夫婦の妊活振り返りインタビュー<前編>では、妊活をはじめたきっかけや、その経緯を妊活たまごクラブがお聞きしました。

妊活振り返りインタビュー・フォーリンラブ ハジメさん夫婦 #1
※参考:「妊活たまごクラブ 初めての不妊治療クリニックガイド 2025-2026」

カップル2人でチェック!専門家が教える妊活成功のための4つのチェックポイント

もしかして不妊?妊活の扉を開けたハジメさん

不妊の原因は一般的に女性にあると思われがちですが、実際には男性側に原因があることも少なくありません。現在、男性側、あるいは男性女性両方に原因がある場合を合わせると、その割合はなんと50%ほどに上るともいわれています。

お笑いコンビ「フォーリンラブ」のハジメさんも男性不妊によって妊活を経験したお1人。2022年8月、自身のYouTubeチャンネルで相方のバービーさんとともに、第1子妊娠と、男性不妊、6年に及ぶ妊活について公表しました。

「子どもは自然にできるものだと思い込んでいました。しかし結婚後、3年経っても妊娠の兆候がなく、ネットでいろいろ調べてみた結果、男性不妊のことを知りました」

ただ、男性が自ら不妊治療専門クリニックに行くのはなかなかハードルが高いもの。でも、ハジメさんは奥様であるミホさんが自分の責任だと思わないよう配慮して、自分から男性不妊治療専門クリニックに行くことを決意しました。

「原因はミホではなく、もしかしたら僕なのかも…という思いもありました。それに、女性が自分からクリニックに行って体を調べるのはなかなかハードルが高いんじゃないかと思って…。それなら僕が先に行ってから、じゃあ私も行こうかなという気持ちになってくれたらいいなと思ったんです」

何とも思いやりのあるハジメさん。“男性不妊 クリニック”で検索して気になったクリニックを訪れました。そこで精液検査をしたところ、精子の運動率がよくないこと(精索静脈瘤 ※1)を告げられました。まずはミホさんに伝えて、今後どうするのかを話し合いました。そして、これをきっかけに2人の6年間の妊活がスタートしたのです。

※1【用語】精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)手術


○男性不妊の原因として多く見られ、日帰り手術が可能
精索静脈瘤は、男性の精巣(睾丸)の静脈におなかからの血液が逆流して精索静脈が瘤(こぶ)状にふくれるもので、正常男性の約15%、男性不妊症の患者の40%ほどにみられるといわれています。治療では精索静脈をしばって血液の逆流を止める手術を行うことが多く、現在は手術用顕微鏡を使用する「低位結紮(けっさつ)術」が主流となっています。術後の精液所見の改善率は40〜60%、1年以内に自然妊娠できる確率は25~45%といわれています。また、体外受精(顕微授精)の成績も向上する可能性が指摘されています。(林先生)

続いてミホさんも不妊治療専門クリニックへ
精索静脈瘤手術の翌日は、相方バービーさんとの営業日。バービーさんに告白したところ、これはネタに…と反復横跳びを求められ、タジタジになったハジメさん。
精索静脈瘤手術の翌日は、相方バービーさんとの営業日。バービーさんに告白したところ、これはネタに…と反復横跳びを求められ、タジタジになったハジメさん。


一方、ミホさんはハジメさんのクリニックでの結果を聞いてこう答えました。

「私もクリニックに行ってみる」

ミホさんもすぐにクリニックを探して受診しました。結果、子宮、卵巣、ホルモンバランスなど、問題となる要素はありませんでした。

まずはこのクリニックで人工授精を2回トライしてみましたが、結果は出ません。このあと、ハジメさんは、自身の精子の運動率を上げるため、再び男性不妊治療専門クリニックを訪れます。

「選択肢が2つあると言われました。1つは漢方薬の服用。もう1つは精索静脈瘤手術。そのクリニックでは成功率が約7割だと聞いたので、可能性があるのならそこに賭けようと手術することを決断しました」

手術は日帰りとはいえ、痛みはもちろん残ります。翌日営業の仕事があったハジメさんは、相方のバービーさんに事情を話しました。

「これはネタにするしかない!」「反復横跳びやってみて!」

営業中に突っ込みを入れられたことは今でも忘れられない思い出になっています。
ハジメさんの手術を終えて妊活を再開。今度こそはと期待を寄せていた2人でしたが、再検査で宣告を受けることになります。

「精子の運動率が手術前と変わっていません」

このとき、ミホさんは34才。年齢的に自然妊娠する可能性が低くなりつつあること、ハジメさんの精子を最大限に生かすためにも少しでも早く妊活を進めることを提案され、顕微授精にステップアップすることになりました。

「排卵誘発のためのホルモン注射を自分で打たなければいけないのは本当に怖かったです…」

1回目の顕微授精で受精卵が2個できたものの、どちらも着床には至りません。そのあともう一度試しましたが、結果、妊娠には至りませんでした。

副作用のつらさで最初のクリニックを卒業

ミホさんが通っていたクリニックは、1回の採卵でなるべく多くの卵子を確保して凍結しておくという方針でした。

「とにかく自分で注射を打つのがつらくて…。注射を打って30分後くらいの副作用は想像以上で、まるでホットフラッシュが起こったかのような感覚。仕事をしていたので休むわけにもいかず、最寄り駅までフラフラになりながら通ったことを覚えています。排卵誘発の薬も思ったより副作用がキツくて…」

そんな治療に苦しむミホさんを見てハジメさんは考えました。

「不妊治療自体が初めてだったので、どんなクリニックがあってどんな治療方針なのかなど、詳しいことは全くわからず、でも治療はしなければとスタートしました。もちろん評判がいいクリニックを選んだんですけど、仕事をしながら自分で注射を打って、つらそうな姿を見て、これは無理があるんじゃないか…と思い始めました」

そのころ、ミホさんの友だち経由で“最後の砦”ともいわれているクリニックがあることを知ります。

「今までのクリニックのようにどんどん卵巣に刺激を与え、注射を打って卵子をたくさん取るといった方針とは真逆で、なるべく自然な形で排卵させるという方針のクリニックでした。クリニックと相性が合う合わないは人それぞれだと思ったので、今までのクリニックで結果が出なかったのは、もしかしたら自分たちには他の治療法のほうが合うんじゃないかと考えて、転院してみようと思いました」

ミホさんの話に、ハジメさんも「すぐに転院しよう!」と同意。精索静脈瘤手術後も、精子の運動率が芳しくなかったハジメさんですが、サプリメントの服用や生活習慣を変えることで少し運動率が上がったこともあり、善は急げとばかり、新しいクリニックの扉を叩くことになりました。ここまでに約2年の月日が流れていました。

転院して間もなく初めての妊娠判定が!

2019年の年末、2人はクリニックを転院し、すぐに治療を再開しました。それまでと違って排卵誘発のための注射はなく、1日1錠の服薬のみで、ミホさんの体の負担はうんと軽くなったそうです。

「この方法が私の体には合っていたようで、そのときはいい状態の卵子が3個取れました」

このクリニックでも顕微授精によって移植をし、その後迎えた判定の日、妊娠をしていることがわかりました。胎嚢も赤ちゃんの心拍も確認でき、妊娠継続率も高いというお墨付き。ミホさんの喜びは頂点に達しました。早速、両親や周囲の友だちにも報告。役所に母子手帳を取りに行き、ワクワクする気持ちが止まりませんでした。
転院したクリニックも早々に卒業することになり、今度は妊婦健診へ。しかし、初めて訪れた産婦人科で思いがけない一言を告げられました。

「心拍が確認できません。稽留流産(※2)の可能性があります」

このときはまだ10週目。想像もしなかった結果にミホさんの頭は真っ暗になったと言います。

「信じられない、信じたくない、その一言でした」

気がつくと診察室の隣に運ばれ、助産師さんの前で泣いていたというミホさん。その後どうやって家に帰宅したかも覚えていないほどのショックでした。ただ、流産が確定したわけではなく、2週間後にもう一度確認するということでした。
報告を受けたハジメさんも次は一緒に産婦人科へ行きました。結果は流産確定。

「“絶望”という言葉も軽く感じるくらいの気持ちでした。でも、僕よりミホのほうがキツいだろうというのは感じました。僕ができることは、あえて前向きの言葉はやめよう、できるだけ彼女と温度感を合わせようということでした」

実は近しい人に妊娠の報告をしていたハジメさん。病院の外に出て電話で報告をしながら、男泣きしてしまったそうです。

「僕たち夫婦は必ずしも最初から温度感が一緒ではありませんでした。でも、ここがターニングポイントになって、僕も改めて妊活について深く考えるようになりました」

※2【用語】稽留(けいりゅう)流産


○母体に症状がなく超音波検査でわかる流産
出血や腹痛などのいわゆる流産の徴候はないが、超音波検査で発育が停止(流産)していると診断されるものを稽留流産といいます。子宮内容除去手術を行う場合と、外来で経過を見て自然排出を待機する場合があります。妊娠週数や経過にもよりますが、排出後から妊活再開までに1~3カ月を要します。(林先生)

コロナ禍により妊活を休むことを選択

稽留流産の手術をした時期、世の中はコロナ禍の真っただ中。不妊治療のクリニックから、先行きが見えないため受精卵の凍結期間を延長するという連絡を受け、2人は一度心身ともにリセットして妊活を休むことを選択しました。

数カ月のお休みのあと、再び治療をスタート。ここからもまた試練が続きます。せっかく着床しているのに妊娠に至らない「化学流産(※3)」を繰り返します。

「クリニックを変えてすぐに妊娠することができたのに、今度は化学流産ばかり…。どうして妊娠できないの?と落ち込みました」

クリニックからは、残された時間が少ないので頑張りましょう、とのエール。そこからミホさんは、結果に一喜一憂せず、治療や、妊活のために自分ができることを一つ一つやっていこうと気持ちを固めました。

配信元: たまひよONLINE

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