フォーリンラブ ハジメさん夫婦の不妊治療体験「赤ちゃんをこの手に抱くまで夫婦の6年」

※3【用語】化学流産


○陽性反応が出ても超音波で確認できない流産
化学流産(生化学的妊娠)とは、尿や血液を用いた検査で妊娠反応は出たものの、超音波検査で妊娠が確認できる前、つまり非常に早い時期に流産してしまった状態をいいます。ごく初期の流産なので、胎児側に原因があることが多いですが、化学流産を繰り返す場合には母体側の体質(不育症)と関連があるという報告もあります。(林先生)

PGT-A検査を決断。ついに妊娠が確定
PGT-A後、妊娠判定の日。当時はコロナ禍で、同席できなかったハジメさんは近くのカフェで祈るような気持ちで待機。ミホさんはお守りを持ちながら診察室に。
PGT-A後、妊娠判定の日。当時はコロナ禍で、同席できなかったハジメさんは近くのカフェで祈るような気持ちで待機。ミホさんはお守りを持ちながら診察室に。


次のトライをしようと考えていたとき、クリニックから当時まだ臨床研究中だというPGT-A(着床前遺伝学的検査の一つ。詳しい検査内容は下記解説を参照 ※4 )という検査の提案を受けました。ただしこの検査は保険適用がなく、継続的に続けることが前提でした。

「染色体に異常がない受精卵の確率はどのくらいか尋ねたところ、5個に1個という回答があって…。一体いくらかければいいの?と頭の中で思わず計算してしまいました」

一方ハジメさんは、この話をミホさんから聞いたとき、ひそかにこう思ったのだそうです。

「このクリニックに来て、稽留流産と化学流産を繰り返しました。ここまでで4回。PGT-Aが5分の1の確率やったら…。え? 次いけるんちゃうん?って」

ここで2人はじっくり話し合いました。ミホさんは、自分が流産を繰り返していることを受けて、確実な受精卵を移植することが大事だという考えをハジメさんに伝え、やれることはやりきろうということに。

PGT-AではいちばんいいグレードAの受精卵なら移植、グレードBでも妊娠できる可能性がないというわけではないという説明を受け、いざ検査へ。その結果、受精卵はいちばんいいグレードAの判定が出たのです。

2022年2月、妊娠判定を受けに行ったミホさん。否応なしに期待値は高まります。当時はコロナ禍で、ハジメさんは近所のカフェで結果を待つことになりました。

「おめでとうございます!」

妊活を始めて6年、度重なる流産を乗り越えて2人がいちばん欲しかった言葉が返ってきました。すぐに携帯電話からハジメさんにメッセージを送ったミホさん。

“ほら、計算どおりやん! 医療の力ってすげえな!!”

ハジメさんの予感は的中しました。その後、改めてクリニックへ。今度は問題なく妊娠が継続していることがわかりました。

妊娠中は健診のたびにちゃんと育っているのかドキドキしていたというミホさんですが、2022年10月、無事に元気な女の子が誕生。ハジメさんは、仕事が終わるとダッシュ帰宅するほどのメロメロぶりだそう。

6年にわたる妊活を振り返り、こう語ってくれました。

「最初は妊娠がゴールだと思いがちですが、その後もいろんなことが起こります。そのときは夫婦でコミュニケーションを取ることが大事。もし迷うことがあったら『妊活たまごクラブ』を読んだらいいよ!!」

※4【用語】PGT-A

○受精卵(胚)の染色体について異数性(染色体の本数の異常)の有無を調べる検査
胚(受精卵)の細胞の一部から、生まれてくる子どもの遺伝情報を調べる着床前遺伝学的検査の一つ。染色体の異数性がある胚を移植しても妊娠に至らなかったり流産の原因になったりするため、胚の細胞の中の染色体について異数性の有無を確認します。異数性のない胚を選んで移植すれば、妊娠率が向上し、流産の確率を抑えられると考えられますが、PGT-A検査は実施可能な医療施設が限られており、現在は一定の適応条件を満たした人のみが受けられます。また、検査は原則自費の上、いくつかデメリットがあるため、実施するかどうかも含め、担当医と家族とよく話し合うことが大切です。(林先生)

ハジメさん夫婦の妊活ヒストリー

2014年●結婚
子どもは自然にできると思っていた。

2017年●
【ハジメ】男性不妊治療専門クリニックへ、精索静脈瘤があることを告げられる。
【ミホ】不妊治療専門クリニックへ、血液検査で問題はなく、人工授精に2回トライするが妊娠に至らず。

2018年●
【ハジメ】 精索静脈瘤手術を受ける

2019年●
・手術後、一度休んだ治療を再開
ハジメさんの精子の運動率の数値が上がらず、卵子の状態もあまりよくなかったが、顕微授精にトライ。妊娠に至らず。
・クリニックを転院
それまでとは違う、自然周期・低刺激周期のクリニックへ。

2020年●
・採卵・・・採卵数を増やすための注射は打たず、服薬のみだったのでミホさんの体はラクに。
・初めての妊娠判定・・・「着床しています。数値も悪くありません」と言われ、周囲にも報告。
・稽留流産・・・10週目にして「心拍が確認できません」と宣告を受ける。
・コロナ禍でしばらく妊活を休む

2021年●
・妊活再スタート&採卵
ミホさん38才。凍結卵もあったが、年齢を考えて採卵を勧められる。

・化学流産を繰り返す
血中のAMH値(卵巣に残っている卵子の数を反映できると考えられているホルモンの値)が43才(実年齢+5才)とわかる。
・「PGT-A」を勧められ「これが妊活の最後」と決めて申請
・1回目のPGTーAで状態のいい受精卵が確認でき、そのまま移植

2022年●
・妊娠判定
・10月、出産

フォーリンラブ ハジメさん夫婦のインタビュー<後編>では、泣いた……笑った!「妊活面白エピソード」についてお聞きしました。
ぜひ、ご覧ください!


●フォーリンラブ ハジメ Profile
フォーリンラブ ハジメさん

1984年生まれ。和歌山県出身。2007年、お笑いコンビ「フォーリンラブ」を結成。男女の恋愛模様をネタにした「イエス、フォーリンラブ!」の決め台詞で人気を得る。2010年、CX「お笑い芸人歌がうまい王座決定戦スペシャル」第18回大会で優勝。プライベートでは6年間の不妊治療を経て2022年10月に第1子が誕生。
自身のYouTubeでは趣味の釣りをメインとした「釣りハジメ」を配信。シロアリ駆除の会社を経営するなど多岐に渡り活躍中。

YouTubeで男性不妊について語っています


YouTubeチャンネル「釣りハジメ」より
YouTubeチャンネル「釣りハジメ」より


●用語解説/林 博 先生
●イラスト/ユリコフ カワヒロ
●取材·文/中島博子

※本誌掲載の内容は2025年8月19日現在のものです。以降変更されることもありますので、ご了承ください。

▼『妊活たまごクラブ 初めての不妊治療クリニックガイド 2025-2026』は、妊活から一歩踏み出して、不妊治療を考え始めたら手に取ってほしい1冊。
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配信元: たまひよONLINE

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