腹膜がんの症状
腹膜がんはほかのがんと同じく初期のうちは症状がなく、進行すれば症状が出てきます。
しかし腹膜は身体の機能に影響しない臓器のため、現れた症状で腹膜の異常を察知するのは困難です。
腹膜がんに見られる各種症状を解説していきましょう。
初期は自覚症状が少ない
腹膜は薄い半透明の膜で、毛細血管やリンパ管が分布しています。
腹膜にがんができてもただちに何か症状が出ることはなく、初期のうちは自覚症状はありません。
初期のがんはごく小さく、周囲の組織に影響を与える力はないためです。進行するにつれ、圧迫や腹水によって症状が出てきます。
腹部膨満感
腹膜がんが進行して出てくる症状のうち腹部の膨満感(お腹のハリ)は、腹水が腹腔内に溜まりすぎたためにおこる症状です。通常は20~50ml程度の腹水があり、腹膜で産生と吸収のバランスが維持されています。
そこに腹膜がんができて炎症がおこり、毛細血管から水分が多量に出てきて腹水が大量に溜まった結果が腹部の膨満感です。
腹水が溜まる原因で特に多いのががん性腹膜炎による腹水で、卵巣がんで特に多くなります。
息切れ
息切れも腹膜がんで生じる大量の腹水による症状です。腹水が溜まると胸の圧迫感とともに息切れ・息苦しさが現れることがあります。
腹水によって腹部が膨張すると下から胸郭や肺に向かって圧力がかかります。胸郭が圧迫され肺の拡張が不十分になって現れるのが、息苦しさや息切れなどの呼吸器の症状です。
腹水による腹部膨満感や呼吸困難に対しては、利尿剤や穿刺ドレナージなどの方法で対応します。ただ、体液の栄養バランスの乱れや血圧・腎機能低下などのリスクへの警戒が必要です。
腹痛
腹膜がんによる腹痛も、がん性腹膜炎によってできる腹水の影響です。
腹水が溜まると胃や腸などの消化器も圧迫され、動きが制限されるために腹痛や吐き気を感じるようになります。
腰痛
卵巣など女性特有のがんが進行した場合に見られるのが、腰痛です。
腫瘍が周囲の神経を圧迫している場合や、腹痛と同じく大量に溜まった腹水の影響も考えられます。また、がんによっておこる炎症も、腰痛の原因になります。
不正出血
腹膜がんが進行すると50%程度は子宮への転移が見られるなど、周辺臓器・リンパ節への転移がおこります。
その場合に不正出血の症状が出る可能性があるでしょう。
排便の異常
腹膜がんの特徴の一つに、炎症による腸管壁の肥厚があります。ぜん動運動の低下など腸管の機能も弱くなり、現れてくる症状は下痢や便秘など排便の異常です。
がんによる便通異常は消化器がんの場合によくみられますが、腹膜がんの場合は間接的な影響によるものです。
腹膜がんと卵巣がんの共通点
大部分の腹膜がんと、卵巣がんのうち卵巣漿液性腺がんとは、病理組織学上ではほぼ同一と見られます。
そして、卵管がんも含めてミュラー管(将来卵管や子宮になる組織)由来腺がんと総称されるがんです。腹膜がんと卵巣がんの間にどういう共通性があるのかを具体的に見ていきましょう。
診断
症状により検査を行い卵巣がんが疑われた場合、肺や胃のような生検は困難です。画像検査や腹腔鏡による観察に加え、まず開腹手術で卵管・卵巣の切除や子宮摘出・リンパ節の切除・腹腔内の腫瘍の切除などが行われます。
そして、切除した組織で病理検査を行って確定診断とする手順です。同時に進行期も決められます。腹膜がんの場合もほぼ同じですが、手術前に腹水・漿液性細胞の有無・腫瘍画像などで事前に予測が可能です。
しかし術後の検査結果により、卵巣がんや卵管がんとして確定診断される場合もあります。
ステージ
腹膜がんのステージ(進行期)は、卵巣がんに準じて判断されるのが基本です。
卵巣がんのステージは以下のとおり1~4までの4段階が基本で、各段階は状態によってさらに細かく分類されます。
ステージ1:腫瘍が卵巣内に留まり腹水に悪性細胞が存在
ステージ2:腫瘍が子宮や卵管など骨盤内に進出・原発性腹膜がん
ステージ3:腫瘍が後腹膜リンパ節に転移・腹膜播種
ステージ4:胸水中の悪性細胞・遠隔臓器に転移
腹膜がんはステージ2~4までの3段階ですが、すでに進行したステージ3で発見される症例がとても多いです。
最初に行う手術でがんを取り切れば予後は良好ですが、後腹膜リンパ節や他臓器に転移がある状態では見通しは厳しくなります。
治療法
腹膜がんの治療法も卵巣がんに準じた手順です。標準治療ではまず手術でできる限りがんを切除し、進行度と組織型を確定診断させた後、必要に応じて抗がん剤による化学療法を行います。
全身状態が悪く手術できない場合、または進行して病巣が大きい場合は先に化学療法で病巣を縮小してから手術する場合もあります。
また、試験開腹で必要な部分だけを切除し、抗がん剤で治療した後再度手術で取り切るなど、治療方法は状況に応じて選択が可能です。

