中村さんという職員の助言で、香苗は退職を決意。ハラスメントの証拠と診断書を突きつけ会社を辞めることに―――。
優しさが心に染みわたる
「私、もう、どうしたらいいか分からなくて。子どもたちに八つ当たりするのも、もうやめたいんです…」
気づけば、私は職員の中村さんの前で、すべてを話し終えていた。途中、声が詰まって何度も言葉を失ったけれど、中村さんは一度も口を挟まず、ただ黙って、私の話を聞いてくれた。 話し終えると、彼女はそっと私の背中をさすってくれた。その手の温かさが、どれだけ心に染み渡ったか。
「よく頑張ったわね、宮田さん。本当に、よく耐えてきた。あなたはもう、我慢しなくていいのよ」
中村さんの言葉は、私が誰にも言えなかった本音を代弁してくれた。
世界が変わったような感覚
「私、実は以前はハローワークで働いていたの。あなたのケースは失業手当を受けられるはずだし、ハラスメント事由ならそのほかのサポートもあるはずよ」
そう言って、中村さんは私のために、具体的な公的支援の情報を調べてくれた。 ハラスメントを理由に退職した人がサポートを受けられる制度や、スキルアップ期間の手当など、私が知らなかったことばかりだった。
「あなたは1人じゃない。助けを求めてくれてありがとうね。まずはあなた自身が無理をするのをやめて、元気になりましょうね」
その言葉が、私の心に光を灯してくれた。どん底でもう無理だと思っていたけど、諦めないで一歩動いたら、こんなにも世界が変わるんだ。

