転機になったのは「地元に松屋を」の気持ち
今治には長らく松屋がありませんでしたが、2025年に初出店が決定。地元に貢献したい気持ちもあって、「せっかくだからご当地メニューを作りたい!」と考えたのが最初の一歩だったと文田さんは語ります。
「中学生や高校生のころは、地元の定食屋で玉子飯をよく食べていました。松屋のオペレーションでもきっと再現できると思い、今治市に『松屋・松のや今治片山店』がオープンするタイミングで『今治焼豚玉子飯』を提案しました」。この“ご当地コラボメニュー”は、当初一部店舗で限定販売でしたが大好評。市役所も協力し、今治市全体で盛り上げた成果もあり、全国発売へこぎつけました。
そしてその盛り上がりを見た隣町・西条市役所に勤める文田さんの同級生から「うちでもぜひ!」と声がかかります。2025年10月、西条市に「東予丹原店 松屋・松のや複合店」がオープンすることをきっかけにコラボが決定しました。
市役所担当者からの「西条といえば西条てっぱんナポリタン」というアイデアから構想をスタートし、「西条てっぱんナポリタン実行委員会」という地元団体との協力も実現しました。完成までには実に10回以上の試食会を重ね、社長の試食でもGOサインが出たことから、今回の商品化が決定したそうです。
シェフ「松屋の絶対条件は“米が進むこと”」
「松屋で大切なのは『米に合うか』」──そう語るのは、商品企画グループのチーフマネージャー・熊谷雄樹さんです。
熊谷シェフによると「ナポリタンをそのまま食べてももちろんおいしいのですが、松屋では『米に合うか』という基準が絶対なので、“ご飯に合うソース”を意識しました」とのこと。
本場・西条市の「西条てっぱんナポリタン」は、ナポリタンソースに柑橘系の酸味を合わせて風味を加えているお店もあるそうです。一方、「西条てっぱんナポリタン」を米と合わせて食べるケースは、本場ではあまり見られなかったといいます。
そこで「米に合う」を信条とする松屋は、本場の味わいを参考にしつつ松屋流にアレンジ。「米との親和性が高い酢を隠し味に加えることによって、“麺料理なのに米と合う”絶妙な味わいを作り出すことができました」と開発秘話を明かしてくれました。
確かに、ナポリタンといえば甘いソースのイメージがありますが、松屋の「西条てっぱんナポリタンハンバーグ」のソースは甘すぎず、適度な塩味と黒胡椒がきいています。
さらに松屋の王道「ハンバーグ」も合わせたことにより、ボリューム満点&もっとご飯が進む味わいに。卵は1皿に2個使って焼き上げることにより、焦げ付かせずにふわふわ食感を生み出すことに成功するなど、緻密(ちみつ)な味の計算がされた一品となっています。

