演歌みたいな悲恋が尊く見えた
正直、茶番もいいところなのである。トニーが常連客ということにするのはその場しのぎ過ぎるだろうし、捕まえた警官は、警官をクビになった大瀬(戸塚純貴)で、「どこの管轄のかたですか?」と刑事(小林隆)に聞かれるも、トニーが気を利かせて暴れたことで有耶無耶になる。リアルではない。でもこんな茶番が尊く見えるのは、市原隼人とアンミカが至極真面目に演じているからだ。アンミカは真っ白い衣裳を、さすがパリコレモデル、このうえなく清潔感あふれて見えるように着こなしている。安普請の劇場楽屋の裏のお茶場でアルマイトのやかんを使って生姜茶を入れる姿は、セレブ感というより清楚。場末で生きて貧しくても誇り高く、情もある人物だと印象づける。きっと彼女はとっても演技派で、アンミカというキャラクターも徹底的に演じているのだろう。
いきなり小栗旬が登場して視聴者は騒然
『もしがく』第9話は30分拡大という大盤振る舞いだった。本番があるのにトニーがオーナーの用事を仰せつかって、出番になっても戻ってこなかったため、彼が戻るまで芝居を引っ張ろうと劇団員があの手この手で奮闘する三谷幸喜の真骨頂だった。オーナーが危険なことに足を突っ込んでいて、雇われている者は彼女の身代わりに捕まらざるを得ないという、ヤクザ映画みたいなエピソードも描かれた。
また、ドタバタの『冬物語』延長バージョンをクベが尊敬する蜷川幸雄が見に来る。蜷川を演じたのが蜷川の薫陶を受けた小栗旬。話題に事欠かない充実回だったが、そのなかでも市原隼人とアンミカの演歌みたいな悲恋がダントツだったと思う。パトラと彗星フォルモン(西村瑞樹)が場をつなぐため、急遽組んで行ったシェイクスピアのコントも楽しかった。
