道具に宿る、手仕事の時間
工房の棚には、年季の入った道具たちが並んでいる。木の餅つき機や、盆菓子用の木型。一つひとつがオーダーメイド。120年分の“こだわり”が道具のひび割れや木目に滲んでいる。
「これはね、うちでずっと使ってる木型。これで練り切りを型取ると、いい感じの陰影が出るんよ」と出倉さんが話す。
その道具たちを眺めていると、職人の仕事とは、効率では測れない“時間の積み重ね”なのだということを教えられる。
佇まいが、目印になる町

町の景色が変わっていくなかで、笑福堂はほとんど変わらない。だからこそ、地元を離れた人が、久々に布施に戻ってくるときには、「ああ、ここだ」と目印になる。
のれんの色も、木の看板も、ガラスケースの中に並ぶ和菓子の姿も。すべてが、あの頃のまま。だけど、決して古びてはいない。それはたぶん、“続ける”という意志が店に染み込んでいるからだと思う。

