夫の逮捕後、佳奈さんは働きながら彼を支え続けますが、届いた“無心の手紙”で全てが崩れます。自己中心的な夫の本性を悟った佳奈さんは離婚を決意し、息子と二人で生きる覚悟を固めます。
支え続けた日々と、募る後悔
それから私は死に物狂いで働きました。結婚まで、コンビニやファミレスでのバイト経験しかない私には、パソコンを使った仕事はとても大変でした。仕事の合間にはせっせと文也の面会に行き、差し入れをする日々でした。
考えることは、いつも同じ。痴漢をしたのは、私のせいなのではないかということ。でき婚で、結婚と同時に出産。そのあとは育児に追われて、夫婦としての時間は持てなかったことは事実です。悔しいですが、あの刑事の言うように、不満を抱えさせたかもしれません。私もそこは懸念していました。
ですが、私は赤ちゃんをおなかの中で守り育て、出産し、昼夜なく世話に明け暮れていて、なかなか夫の思いに応えられるような心身の状態ではありませんでした。後悔の気持ちでいっぱいになりながら、いろいろなことに耐えました。これ見よがしのひそひそ話、義母の嫌味と離婚コール…。
文也からは「母さんの言ってることは無視して。俺が戻ったら、佳奈を守る」と言われていました。その言葉を信じて、私は厳しい毎日を過ごしました。
夫から届いた衝撃の手紙
ある日、玄関ポストに手紙が入っていることに気が付きました。見ると、文也からです。うれしくなり、急いで読むと、それはお金を無心する手紙でした。お金がないから届けてほしい、好きなものも買えず、みじめに暮らしていると。
「は?」
私や息子への謝罪もなく、自分の要求ばかり。なんだか私の心の中で、何かがプツッと切れる感じがしました。
私は死に物狂いで働きながらこの人を待っていて、幸せになんてなれるのだろうか?

