思わず笑顔に!円山応挙の愛らしい子犬たち
円山応挙『朝顔狗子図杉戸絵』(部分), Public domain, via Wikimedia Commons.
円山応挙は「写生の人」と呼ばれ、多くの写生帖を残しました。人物はもちろんのこと、風景や植物画など、その鋭い観察眼でさまざまな絵を描き続けたのです。
その中でも印象的なのは、生後間もない子犬の絵です。ただ写実的に子犬たちを描くのではなく、そのふわふわした毛並みや愛くるしい仕草などを、巧みに表現しました。
子犬独特の丸みを帯びたフォルム、くりくりとした丸い目など、応挙の描く子犬たちはとても愛らしい姿です。
実際の犬の目はそのほとんどが黒目ですが、応挙の描いた子犬には白目の部分がはっきりと描かれており、それが多彩な感情をうまく表現しています。
応挙は、動物の形や動きをよく観察して、可愛らしさや人の心を掴むポイントをよく研究していました。それは子犬たちの毛並みの質感や表情だけではなく、動作やポーズなどにも現れています。
もふもふの毛皮、応挙が写生した「虎」の魅力とは
金刀比羅宮表書院『虎の間』より(部分), Public domain, via Wikimedia Commons.
古くから、虎は多くの画家たちの画題に取り上げられていた生き物でした。しかし、江戸時代の日本には虎は生息しておらず、画家たちは中国絵などを手本として虎の絵を描いていました。
応挙は、実物大の虎の毛皮を写生して、実際の虎の体や表情、毛並みなどを再現しました。各部分の長さなどが記された、詳細な観察資料も残されています。
現在、動物園などで本物の虎を見る機会がある私たちからすると、応挙の描いた虎はそこまでリアルなものに感じられないかもしれません。
実際の虎よりもずいぶんと丸みがあり、手足もぽってりとしていて、その表情まで含めると、全体的に猫を思わせるような雰囲気です。しかし、それがかえって可愛らしく、魅力を引き出しています。
応挙は香川県の金刀比羅宮(ことひらぐう)の障壁画をはじめ、多くの虎の絵を描きました。こうした作品により、虎の絵の名手としても知られているのです。
