脊髄損傷と脊椎損傷の違いをご存じですか。この2つの病名は似た名称をしているので、どのような違いがあるのか詳しくは知らないという方もいるのではないでしょうか。脊髄と脊椎は別の部位を指す言葉であり、脊髄損傷と脊椎損傷の症状・原因・応急処置などは大きく異なります。こちらでは、脊髄損傷と脊椎損傷の違いについて詳しく解説していきます。2つの違いやそれぞれの治療方法などについて知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
※この記事はメディカルドックにて『「脊髄損傷・脊椎損傷」の症状・原因はご存知ですか?医師が監修!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
郷 正憲(徳島赤十字病院)
徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。
脊髄損傷・脊椎損傷の違いと症状

脊髄損傷・脊椎損傷の違いを教えてください。
脊髄と脊椎は似た言葉ですが、医学的には違いがあります。脊椎とは、背骨を構成する骨のことです。一方で、脊髄とは脊椎を通る神経を指します。脊髄損傷は神経の損傷を意味し、脊椎損傷は背骨の損傷(骨折や剥離など)を意味するという大きな違いがあるのです。
何が原因で脊髄損傷・脊椎損傷するのでしょうか?
脊髄損傷は脊椎の骨折や脱臼によって神経を圧迫することが原因で起こります。一方、脊椎損傷は、交通事故・高い所からの転落・転倒などによって脊椎に強い外力がかかることのほか、血行障害や腫瘍など外傷以外も原因となるのが特徴です。
高齢者の場合には骨粗鬆症で骨が脆くなり、転んだだけで脊椎を損傷してしまう場合もあります。
どのような症状が現れますか?
脊髄損傷では、損傷した神経が関与する手足の運動麻痺や感覚障害が出現します。損傷部位によっては排泄障害といって尿意や便意が分からなくなることがあるのも特徴です。また、脊髄損傷は障害の程度によって完全麻痺と不全麻痺に区分され、完全麻痺の場合には下肢を全く動かすことができず、感覚も消失します。
脊椎損傷では骨折部位に痛みが出現し、重度の場合には背骨が変形してしまうケースもあるでしょう。運動は正常でも感覚障害がある場合やその逆などのパターンもあります。
また脊椎損傷は、完全損傷と不完全損傷の2つの症状に分類されます。
完全損傷では、感覚知覚機能や運動機能機能が失われることも少なくありません。不完全損傷の場合は運動機能が残る軽症のケースもあれば、重症度の高いケースもあり、様々です。
脊髄損傷・脊椎損傷を疑った場合の応急処置を教えてください。
脊髄損傷、脊椎損傷ともに損傷した部位を固定することが重要です。しっかり固定することで損傷の広がりを予防ができます。脊髄損傷の場合、損傷部位の広がりが運動麻痺の重症度に直接影響するため損傷の広がりを防ぎましょう。
編集部まとめ

交通事故や転倒などによって、脊髄損傷や脊椎損傷が起こることがあります。
脊髄損傷と脊椎損傷は似た名前ですが、脊髄は神経、脊椎は骨(背骨)の損傷であり、症状・予後・治療方法などが異なるため注意が必要です。
背骨の中の神経が損傷する脊髄損傷が起こってしまうと四肢を動かせなくなってしまう可能性もあるため、日ごろから転倒などの予防を心掛けましょう。
参考文献
「脊椎損傷」(日本整形外科学会)
「脊椎椎体骨折」(日本整形外科学会)

