「楽しむ」より「本気」に引きずられてしまった
亘は達也にこう聞いた。
「達也、本気でサッカー強くなりたいと思ってんのか?」
「うん、僕もっと強くなって選手になりたい!」
「よし、その言葉忘れるなよ、やるなら本気でやれ」
亘の迫力に押され、私はいつの間にか、達也の「楽しみたい」という純粋な気持ちを棚に上げ、亘の「本気でやらせる」という目標に引きずり込まれていくことになった。
もちろん、チーム選びは私の出る幕ではなくて、亘が何チームも問い合わせて調べあげた。「上を目指しているチーム」でないと達也を入れる価値がないというのだ。
私の心の中では、そんな厳しいチームに入って、繊細な達也は大丈夫だろうか、という不安が渦巻いていた。でも、達也自身が「パパが見つけてくれたチームで頑張る!」と目を輝かせていたから、私は口をつぐんだまま、彼の決断に委ねるしかなかった。
これが、わが家の「体育会系すぎる夫」による、達也のサッカー人生の幕開け。最初は熱心な父親がいていいかもと思っていたけれど、そんなに甘いものではなかったのです―――。
あとがき:親の夢、子の夢
美香子の「楽しめればいい」という純粋な願いは、亘の「本気でやらせる」という目標によって、早くもかき消されてしまいました。この違いは、単なる教育方針の差ではなく、亘自身の「達成できなかった過去」が色濃く反映されています。
達也のキラキラした瞳が、親の重い期待にどう耐えていくのか。この時、達也の胸にはサッカーへの憧れしかなかったはずなのに、親の介入によって、その純粋な楽しさがプレッシャーへと変わる予兆を感じさせます。子どもを思う気持ちと、親のエゴは紙一重ですね。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています
記事作成: ゆずプー
(配信元: ママリ)

