警察に言われた言葉に安堵
沙織の提案に、私は最後の力を振り絞って、警察の生活安全課(DV相談)に電話をかけました。事情を説明するのは本当に勇気がいりましたが、電話口の女性警察官は、私の言葉を遮ることなく、とてもていねいに聞いてくれました。
「楓さん、まず落ち着いてください。別居されている状況、大変でしたね。まず結論から申し上げます。今回、楓さんがご主人の留守中に、ご自身の私物とお子さんの荷物を持ち帰った行為は、窃盗や不法侵入といった犯罪に問われる可能性はありませんよ」
「えっ……本当に?」
「はい。婚姻関係にあるわけですから、自宅のものを持ち出しただけですよね。それに、このご主人からのメッセージの方が、楓さんやご友人を脅すような内容になっていて、味方によっては恐喝のように思えます」
警察官の言葉で、私の全身から力が抜けました。
「楓さんのお話の内容を聞くと、DVにあたる可能性は十分あると思いますので、このLINEの記録も全て保存しておいてください。これは重要な証拠になりますからね」
私は罪人ではなかった。その事実に、どれだけ救われたか分かりません。この恐怖と闘うための、一筋の光が見えた気がしました。
あとがき:訴訟の脅しに打ち勝つ真実
モラハラ加害者がよく使う手口が「訴訟で脅す」ことです。これにより、被害者は「自分が犯罪を犯したのではないか」と追い込まれ、支配下に戻ろうとしてしまいます。
直哉の脅迫的なメッセージは、楓の恐怖心を煽りましたが、警察官による「犯罪には当たらない」というプロの言葉が、その呪縛を解きました。この通報は、感情的な恐怖から、冷静に「法」という客観的な力で身を守るという、戦い方への転換点となりました。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています
記事作成: ゆずプー
(配信元: ママリ)

