舌の奥のぶつぶつは、正常な解剖学的構造である場合もあれば、炎症や感染による病的な変化の可能性もあります。正常な舌乳頭と病的な変化の見分け方や、炎症・感染によって生じるぶつぶつの特徴を知ることで、不要な不安を軽減できるでしょう。ここでは、よく見られる原因とその見分け方について解説します。

監修歯科医師:
橋村 威慶(サッカー通りみなみデンタルオフィス)
1998年 鹿児島大学歯学部 卒業
2002年3月 すなまち北歯科クリニック 開設
2014年2月~2016年3月 東京大学医科学研究所 客員研究員
2019年5月 東京都文京区にサッカー通りみなみデンタルオフィス 開設
2019年6月 特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員
【専門・資格・所属】
日本抗加齢医学会 専門医
日本歯周病学会
日本補綴歯科学会
日本アンチエイジング歯科学会
舌の奥にぶつぶつができる一般的な原因
舌の奥のぶつぶつは、正常な解剖学的構造から病的な変化まで、さまざまな原因で生じます。痛みの有無を問わず、よく見られる原因について理解することで、不要な不安を軽減できます。
正常な舌乳頭と病的な変化の見分け方
舌の表面には糸状乳頭、茸状乳頭、葉状乳頭、有郭乳頭といった4種類の乳頭が分布しており、特に舌の奥には有郭乳頭と呼ばれる大きな乳頭が7個から12個ほど並んでいます。これらは正常な構造であり、病的なものではありません。有郭乳頭は直径2mmから3mm程度の丸い突起で、舌の付け根に近い部分にV字型に配列しているのが特徴です。鏡で舌を観察すると、左右対称に存在していることが確認できます。
病的な変化との見分け方としては、痛みや色調の変化、急激な大きさの増大、出血、潰瘍形成などの有無がポイントになります。正常な乳頭は痛みがなく、舌と同じピンク色をしており、大きさも一定です。一方、炎症や感染が起きると赤く腫れたり、白い苔状の付着物が見られたりします。また、左右非対称に腫れている場合や、数週間にわたって縮小しない場合には、専門医による評価が必要です。日常的に鏡で口腔内を確認する習慣をつけることで、変化に早く気づくことができるでしょう。
炎症や感染によるぶつぶつ
細菌やウイルス、真菌などの感染によって舌の奥にぶつぶつが生じることがあります。特にカンジダという真菌の感染では、舌の表面に白い苔状の付着物が見られ、こすると剥がれて下に赤い粘膜が露出します。免疫力が低下している方や、抗生物質を長期使用している方に起こりやすく、痛みやヒリヒリ感を伴うことが多いです。糖尿病や免疫抑制剤を使用している方では、特に注意が必要となります。
細菌感染では、扁桃炎や咽頭炎に伴って舌の奥が炎症を起こし、ぶつぶつが目立つようになることもあります。発熱や咽頭痛、嚥下時痛などを伴う場合には、耳鼻咽喉科での診察が推奨されます。また、口腔内の不衛生な状態が続くと、細菌が繁殖しやすくなり、舌乳頭の炎症を引き起こすこともあります。日常的な口腔ケアの見直しが予防につながります。歯磨きや舌ブラシによる清掃含嗽を習慣化し、口腔内の清潔を保つことが、感染予防の基本となるでしょう。
舌の奥のぶつぶつと性感染症の関連性
舌の奥にぶつぶつができたとき、性感染症との関連を心配される方もいます。性感染症による口腔内病変の特徴を理解することで、適切な対応が可能になります。
性感染症で口腔内に症状が出るケース
性感染症のなかで口腔内に病変を生じるものとしては、梅毒、単純ヘルペスウイルス感染症、淋菌感染症、HIVなどが挙げられます。梅毒では第一期に硬性下疳と呼ばれる無痛性の潰瘍が唇や舌に生じることがあり、第二期には口腔粘膜に赤い斑点や丘疹が多発することがあります。近年、梅毒の報告数は増加傾向にあり、注意が必要です。感染後の経過によって症状が変化するため、時期によって異なる所見が見られます。
単純ヘルペスウイルス2型は性器ヘルペスの原因ウイルスですが、オーラルセックスによって口腔内に感染することもあります。舌や歯茎、口蓋などに小さな水疱や潰瘍が多発し、強い痛みを伴うのが特徴です。また、淋菌による咽頭感染では、咽頭痛や発赤を伴うことがありますが、舌の奥に特異的なぶつぶつを生じることは比較的まれです。症状が軽微な場合や無症状の場合もあるため、リスクがある場合には検査を受けることが推奨されます。
性感染症を疑うべき症状と検査
性感染症を疑うべき症状としては、無防備な性的接触の後に口腔内に潰瘍や発疹が生じた場合、全身の発熱やリンパ節の腫脹を伴う場合、パートナーに性感染症の診断がある場合などが挙げられます。また、痛みを伴わない硬い潰瘍が長期間持続する場合には、梅毒の可能性を考慮する必要があります。性的接触の内容や時期、パートナーの健康状態などの情報が、診断の手がかりになります。
診断には血液検査や病変部からの培養検査、PCR検査などが用いられます。梅毒では血清抗体検査が基本となり、複数の検査を組み合わせて診断します。ヘルペスウイルス感染では、病変部からウイルスの検出や抗原検査が行われることもあります。性感染症が疑われる場合には、泌尿器科、婦人科、皮膚科、性感染症内科などで検査を受けることができます。早期発見と早期治療が重要であり、パートナーへの感染拡大防止のためにも速やかな受診が推奨されます。検査結果が陰性であっても、感染初期には検出されないこともあるため、適切な時期に再検査が必要になる場合もあります。

