シリーズ第三弾『インフェルノ』(2016)
参照:『インフェルノ』(2016)
2016年に公開された『インフェルノ』は、ロバート・ラングドンシリーズの映画第三弾です。ロン・ハワードが監督し、トム・ハンクスが主演を務めました。
ロバート・ラングドンは、イタリア・フィレンツェの病院で、記憶を失った状態で目覚めます。そして、大富豪の遺伝学者バートランド・ゾブリストが開発した、世界人口の半分を絶滅させることを目的としたウィルス「インフェルノ」をめぐり、壮大な陰謀に巻き込まれてしまいます。
手がかりになるのが、ルネサンス期の詩人、ダンテ・アリギエーリの叙事詩『神曲』の「地獄篇(インフェルノ)」と、それに関連する芸術作品群です。ラングドンは、ゾブリストが残した手がかりである小型プロジェクターから、一連の謎を解いていきます。
そこで登場するのが、ルネサンスの画家サンドロ・ボッティチェリによる《地獄の見取り図》です。「地獄篇」で描かれた地獄の階層構造を視覚化したペン画であり、映画ではウィルスの隠し場所を示す暗号図として利用されます。
サンドロ・ボッティチェリ《地獄の見取り図》(1480~1495)/バチカン図書館, Public domain, via Wikimedia Commons.
「『神曲』全100歌のすべてに全面挿絵を施す」という、前例のない野心的な構想がボッティチェリにはありましたが、未完に終わりました。 挿絵の多くは、銀筆による下書きの段階に留まっています。現在、現存する92点の挿絵のうち、大部分はベルリン版画素描館に、そして《地獄の見取り図》を含む一部はバチカン図書館に所蔵されています。
この謎を解くうちに、主人公はヴェッキオ宮殿や「バシリカ・シスターナ」(イスタンブールの地下貯水槽)といった歴史的な場所を巡り、人類の未来をかけたタイムリミットに挑むこととなります。
ボッティチェリの代表作《春(プリマヴェーラ)》や《ヴィーナスの誕生》については、こちらの記事でご紹介しています。

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映画でアートと歴史の謎を解こう
『ダ・ヴィンチ・コード』『天使と悪魔』『インフェルノ』。ダン・ブラウンの最新作発売をきっかけに、ロバート・ラングドンシリーズの映画たちを楽しんでみませんか?名作に隠されたダン・ブラウン流のアートと歴史の秘密が、みなさんの知的好奇心を刺激してくれるはずです。
◆参考
ロン・ハワード監督『ダ・ヴィンチ・コード』(2006)
ロン・ハワード監督『天使と悪魔』(2009)
ロン・ハワード監督『インフェルノ』(2016)
