横浜流星が主演を務める大河ドラマ「べらぼう～蔦重栄華乃夢噺～」(毎週日曜夜8:00-8:45ほか、NHK総合ほか)の第47回「饅頭こわい」が12月7日に放送。国元へ帰ることになった松平定信(井上祐貴)が蔦重(横浜)の店に立ち寄ったときの様子が大きな反響を呼んだ。(以下、ネタバレを含みます)
■数々の浮世絵師らを世に送り出した“江戸のメディア王”の波乱の生涯を描く
森下佳子が脚本を務める本作は、18世紀半ば、町民文化が花開き大都市へと発展した江戸を舞台に、“江戸のメディア王”にまで成り上がった“蔦重”こと蔦屋重三郎の波乱万丈の生涯を描く痛快エンターテイメントドラマ。
蔦重はその人生の中で喜多川歌麿、葛飾北斎、山東京伝、滝沢馬琴を見い出し、また日本史上最大の謎の一つといわれる“東洲斎写楽”を世に送り出すことになる。
美人画が大評判となる喜多川歌麿役で染谷将太、蔦重の妻・てい役で橋本愛らが出演。語りを綾瀬はるかが務める。
■国元へ帰る途中の定信が蔦重の店を訪れる
定信らによる蔦重を巻き込んだ一橋治済(生田斗真)への仇討ちは、治済の実の息子でもある第11代将軍・家斉(城桧吏)の協力も得て、阿波の孤島へと送るという決着になった。江戸にいる“治済”は、治済とそっくりの能役者・斎藤十郎兵衛(※生田斗真の一人二役)が入れ替わった。
蔦重は、身の危険があったことから閉めていた店を再開。そんなある日、定信がやって来た。
のれんをくぐるなり、うれしそうな笑みを浮かべ、目を輝かせながら店中をきょろきょろと眺める定信。蔦重が「今日は、いかなるご用向きで」と怪訝(けげん)そうに問い掛けると、「国元へ下るのでな」と言う。
そう言いながら、「む、これは？」と1冊の黄表紙を手に取る。蔦重が「昔の黄表紙を仕立て直しておりまして」と伝えると、驚いたように「今さら売れるのか？」と問う。「江戸ではそこそこにございますが、今、諸国では黄表紙が流行っておるのでございます」と蔦重が答えているうちに、定信はそこにあった黄表紙を次々と手に取り、抱えこんだ。
「江戸を離れられるのでございますね。ご公儀の政にお戻りになると考えておりましたが」と蔦重が話すと、「いま戻れば要らぬうわさを呼ぶことになろうし、それに、外道とはいえ、上様の御父君をはめたのだ。誰知らずとも謀反の罰は受けるべきである」と定信。
人に厳しい一方、自分も厳しく律して筋を通す。定信らしい決意だった。
■オタクな一面をのぞかせた定信に「大好きになった」の声
その後、定信がおかしな言葉を口にする。
「いキちキどコきキてケみキたカかカったカのコだカ」。
不思議に思う蔦重だったが、定信がもう一度繰り返すと理解した。亡き恋川春町(岡山天音)の黄表紙「金々先生栄花夢」にも出てきた、遊里で流行した“カキクケコ”の五音を言葉の間に挟んで話す“挟み言葉”。
つまり「一度来てみたかったのだ」と言ったのだ。
「『金々先生』よりこちら黄表紙はもれなく読んでおる。春町は我が神、蔦屋耕書堂は神々の集う神殿(やしろ)であった」と定信。そして「あのことは、我が政、唯一の不覚である。上がった凧を許し、笑うことができれば…すべてが違った」と続け、春町の自害を悔いていることを打ち明けた。
そんな定信に蔦重は、治済の仇討ちで自分が役割を背負った写楽を売り出したのは、「春町先生への供養のつもりで取り組んだのでございますよ」と明かす。「春町先生をそそのかし、でっけえ凧を上げさせちまったのは私にございますんで」と、蔦重もまた悔いていたのだ。
「ご一緒できて、ようございました」と蔦重が頭を下げると、定信はまた驚きのことを告げる。「では、今後は随時よき品を見繕い、こまめに白河へ送るよう」と命じたのだ。
語りによると、このあと定信は、国元で民の暮らしの向上につとめ、同時に文化振興にもつとめ、自らを「楽翁(らくおう)」と名乗って、硬軟兼ね備えた“オタク”としてもその名を歴史に残したという。
定信の春町への思いは、第36回での慟哭する姿から伝わって来たが、今回改めて心を揺さぶられた。また、これまでも黄表紙を嬉々として読んでいる姿などの描写はあったが、春町を神と呼び、耕書堂を神々が集う神殿と表現するのはまさにオタク気質。視聴者からも「語彙が完全にオタクのそれ」「オタクの聖地巡礼」「ナレでオタク認定されてる(笑)」と反響が。さらに本作での定信に対して「憎めない愛すべきキャラ」「憎めないキャラクターでとても好きでした」「印象最悪だった定信くんが大好きになった」といった声も上がった。
◆文＝ザテレビジョンドラマ部
