自分の夢をわが子に託す夫
達也は、入会当初はまだ、その緊張感を楽しんでいるようだったの。
「パパ!あのシュートかっこよかったね!僕もできるようになりたい!」
「おう!そのためには、今の100倍練習しないとダメだぞ」
亘は、達也の頑張る姿を見て、まるで自分の夢をもう一度追いかけているかのように目を輝かせていた。そんな達也は、サッカーの強豪校に進学しながらもレギュラーを掴めないまま引退した過去があるという。その悔しさが、今、達也の背中に乗り移っているのだろうか。
夫の厳しいスタンスは、達也への期待の裏返しだとも理解できた。でも、繊細な達也にとって、この強すぎる期待とプレッシャーは、あまりにも重すぎたのかもしれない。
練習が始まって数週間。達也は必死に食らいついていたけれど、周りのレベルについていくことはできていなかった。そして試合の日。達也にもほんの少し出場のチャンスが与えられた。
「いいか、達也。試合は練習と違う。全力で、がむしゃらにやれ。パパが見てるぞ」
亘はそう言って、達也の背中を力強く押した。その言葉は、達也の心に火をつけたのか、それとも、とどめの一撃となったのか。私には、そのどちらとも判別がつかなかった。
ただ、この日から、達也のサッカーに対する態度が、少しずつ、確実に変わっていくのを感じていたのよ。不安と重圧が、達也の小さな肩にのしかかっているのが、痛いほど伝わってくるほどに―――。
あとがき:「本気」の次元が違う
「お遊び」と「ガチ」のチームでは、空気も指導も保護者の熱量も全く違います。達也にとって、強豪チームの環境は憧れでもあり、同時に逃げ出したくなるほどの重圧でもあったでしょう。達也の瞳の奥に宿る「恐怖」を美香子は感じ取っていますが、亘の情熱的な「期待」を前に、口を挟めずにいるのが伝わってきます。
この「期待」は、亘が達也を愛している証拠でもありますが、それは達也自身のキャパシティを超えた重荷になっていくことを予感させます。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています
記事作成: ゆずプー
(配信元: ママリ)

