伊藤詩織さん、映画公開初日に声明「真実の『かけら』つないだ作品」、元代理人は「法的問題解決されず」

伊藤詩織さん、映画公開初日に声明「真実の『かけら』つないだ作品」、元代理人は「法的問題解決されず」

ジャーナリストの伊藤詩織さんが、自身の性被害を題材にした映画『Black Box Diaries』公開初日の12月12日、自身のサイトを通じて声明を公表した。

同時に公表した資料で、映画の中で承諾のないまま使用されてきたとされる映像や音声について、その扱いの経緯や、日本版への修正内容を説明した。

伊藤さんは声明で、映画について「自ら調査し、再度集めた証言など、真実の『かけら』をつないだのが本作です」「ジャーナリストとしての報道ではなく、当事者である私が、自分の物語を引き受けて編み直したドキュメンタリー」とした。

性被害の現場となったホテルの防犯カメラ映像については、当初から「外観・内装・車両等をCGで差し替えるなどの編集・加工」をしたと説明。ホテルに対して「裁判目的以外で映像を使用しない」と誓約しているが、その「制限には該当しない」との考えを改めて示した。

●防犯カメラ映像の扱い「責任は私にあります」

また、伊藤さんは公式サイト上で「日本公開版に関する事実関係および修正・配慮事項」として、ホテルの防犯カメラ映像、元代理人の西広陽子弁護士、捜査官などの音声や映像の扱いについて説明した。

「ホテルとは裁判以外に防犯カメラ映像を使わないと約束したのは事実であり、防犯カメラ映像の取得にご協力いただいた西広弁護士には申し訳なく思いますが、性暴力被害の実像を問題提起する本件映画において不可欠と判断し、決断しました。責任は私にあります」(伊藤さん)

西広弁護士との電話の音声が入っていたシーンは、日本版からカットしたという。さらに、日本版では「西広弁護士が映らないように配慮した編集を行う判断をし、変更しています」と説明している。

捜査官のシーンは「オリジナル版のものから一貫して、顔など特定できる映像は使っておらず、音声は声質加工を施したうえで使用しています。日本版では音声をさらに加工して編集しています」とした。

伊藤さんは声明で「性暴力の被害を受けた人たちが、証拠や声を軽んじられることなく、安心して助けを求められる社会に近づく一歩となることを願っています」としている。

●「また録音されるのだろう」元代理人の懸念

日本公開前日の11月11日、西広弁護士は報道各社に公表したコメントの中で「残念ながら、法的な問題は解決されてはいません」と指摘していた。

伊藤さんは、西広さんのこうしたコメントに対しても考えを明らかにした。

「私は、元弁護団の方々への感謝の気持ちを、今も変わらず持ち続けています。今後も話し合いの場を求めていきます。その一方で、これまで繰り返し公の場で事実と異なることが語られてきたことについては、深い困惑を覚えています。」(伊藤さんのコメント)

西広弁護士は11日のコメントで、伊藤さん側から説明の機会を求められたことに「日本で映画を上映するための既成事実をつくり、 それに利用されるのだと感じました。 また無断で録音されるのだろうとも思いました」と述べていた。

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