「うつ病」も「自律神経失調症」も、働く人に多くみられる疾患です。しかし、発症のメカニズムには違いがあり、診断基準も異なります。一体、どのような違いがあるのか、「シモキタよあけ心療内科」の副島先生に解説していただきました。

監修医師:
副島 正紀(シモキタよあけ心療内科)
東京慈恵会医科大学医学部医学科卒業。その後、大森赤十字病院、東京都立松沢病院、東京都立小児総合医療センター、稲城台病院などで経験を積む。2024年、東京都世田谷区に「シモキタよあけ心療内科」を開院。日本精神神経学会専門医・指導医・認知症診療医。精神保健指定医。
編集部
うつ病を発症するのはなぜですか?
副島先生
自律神経失調症と同様、うつ病の場合も複数の要因が重なって発症すると考えられています。うつ病を発症する原因は明らかにされていませんが、精神的ストレスやもともとの性格、遺伝的要因などが発症に関係しているとされています。
編集部
どちらもストレスを原因として発症するのですね。
副島先生
ただし、発症の機序が異なります。自律神経失調症の場合には、ストレスがかかることによって交感神経と副交感神経のバランスが崩れ、自律神経が乱れて発症します。一方、うつ病の場合にはストレスなどにより、セロトニンやドーパミンなど、脳内の神経伝達物質が少なくなることが原因で発症すると考えられています。
編集部
症状は似ているけれど、体内で起きていることが違うのですね。
副島先生
はい。そのため、自律神経失調症とうつ病では基本となる治療法が異なります。自律神経失調症の場合には「睡眠時間をしっかりとる」「運動習慣を身につける」など、生活習慣の改善を中心にして、必要に応じて薬物療法や心理療法などをおこないます。心理療法とは認知行動療法など、心理的なアプローチでストレスの軽減を目指す治療法を指します。
編集部
うつ病はどうやって治療するのですか?
副島先生
うつ病の治療は、多角的にアプローチすることが大事です。抗うつ薬や抗不安薬、睡眠薬などを用いた薬物療法をおこなうほか、認知行動療法などの心理療法も取り入れます。あわせて、生活習慣を改善したり、場合によっては休職したりするといった環境調整も必要です。
編集部
どちらが治りにくいなど、違いはあるのですか?
副島先生
両方とも重度の場合には治療が長引くこともあるため、どちらの治療が難しいかは一概に言えません。早期に発見し、適切な時期に治療を開始することで早期回復が期待できるので、おかしいなと思った時点で早めに受診することが大切です。
※この記事はメディカルドックにて<「うつ病」と「自律神経失調症」の違いはご存じですか? 特徴的な症状・予防法も医師が解説>と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。
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