染谷将太が語る歌麿の思いの行き着く先「蔦重への気持ちを認めることができた」一筋縄ではいかない二人の関係性への思い<大河べらぼう>

染谷将太が語る歌麿の思いの行き着く先「蔦重への気持ちを認めることができた」一筋縄ではいかない二人の関係性への思い<大河べらぼう>

大河ドラマ「べらぼう」で歌麿を演じる染谷将太にインタビューを実施
大河ドラマ「べらぼう」で歌麿を演じる染谷将太にインタビューを実施 / (C)NHK

横浜流星が主演を務める大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」(毎週日曜夜8:00-8:45ほか、NHK総合ほか※最終回は15分拡大)。森下佳子が脚本を務める本作は、18世紀半ば、町民文化が花開き大都市へと発展した江戸を舞台に、“江戸のメディア王”として時代の人気者になった“蔦重”こと蔦屋重三郎の波乱と“エンタメ”に満ちた人生を描く“痛快”エンターテインメントドラマ。

WEBザテレビジョンでは、12月14日(日)放送の最終回を前に、「べらぼう」を語る上で欠かせない人物の一人、喜多川歌麿を演じる染谷将太にインタビューを実施。歌麿との向き合い方、蔦重と歌麿の関係性など、作品への思いを語ってもらった。

■とても濃密で濃厚な時間でした

――「べらぼう」の収録を終えたお気持ちをお聞かせください。

ほっとしました。自分は2024年末からの合流だったので、約10カ月の収録期間だったのですが、とても濃密で濃厚な時間でした。無事に自分が演じ切ったという安心感と、作品全体が無事に撮り終わったという気持ちで、ほっとしましたね。

――これまでも大河ドラマに出演されてきた染谷さんですが、江戸中期は初めての時代だったと思います。どのように感じられましたか?

230~250年ほど前のことですので、割とつい最近の話でもあるのだなという感覚がありました。もちろん時代劇の所作はありますが、いい意味でざっくばらんとしており、地名も含めて私たちの日常の延長線上にある世界観だなと感じ、すごく親しみを覚えましたね。描いている内容も、米騒動など現代ともリンクする部分が多く、歴史は繰り返しているのだなと感じることが多々ありました。今と地続きの世界だと感じやすい時代を描いている内容だったので、演じていても面白かったです。

■天才絵師・歌麿になる過程を演じることは挑戦でした

――染谷さんは才気あふれた役柄を演じられることが多いように思います。歌麿もそうだったと思いますが、特に挑戦的だった部分はありますか?

確かに、天才と名がつく役をいただくことが多いという自覚がございまして(笑)。今回お話をいただいた際も、「天才絵師・歌麿です」と伺い、「天才絵師か…」と(笑)。自分の中で天才というものは、生まれ持った才という、先天的なイメージが強かったんです。ですが歌麿に関しては、絵師としての才能を見出される前の状態から、才能が開花し世に広がり大先生として成長していくという過程を演じることができ、そのことは大きな挑戦でした。天才絵師と言われるようになっていくさまを表現していくことはすごく面白かったですし、その過程を丁寧にしっかり演じないと大先生に見えていかないということもあり、頑張りました。

――歌麿を演じるに当たり、ほかにも大変だったと感じる点はありますか?

絵ですね。今回絵師役の皆さんは練習して実際にシーンの中で吹き替えなしで描かれていたのですが、歌麿は分量も多かったですし、有名な絵も多いので、ある種のプレッシャーも感じていました。やはり歴史的に有名な絵を大河ドラマの中で実際に描かせていただくということは、すごく緊張しました。筆はすごく難しいので、少しでも手が震えると筆先に出てしまいますし、体重のかけ方など意識することが多く、お芝居をしながら絵を描くということは自分の中でもハードルが高く、大変でした。

――「べらぼう」の収録中は、ご自宅でも練習をされていたのでしょうか。

していました。基本的には、台本が上がってくると、演出と、絵のチームの先生、そして絵を担当している助監督の皆さんによる打ち合わせがあって。そして描かなければいけないものがたくさん並んだ計算ドリルのようなプリントをいただくんです。そのプリントを何十枚といただき、家に持ち帰って練習をしていました。

――その中でも、一番印象に残っている絵というと?

やはり「ポッピンを吹く娘」です。子供の頃から教科書などで見たことがある絵でしたし、作品の中でそこに行き着いた時は感慨深いものがありました。あとは、写楽ですね。初めのプロット段階で何となくは伺っていましたが、まさか自分が写楽の絵にも参加できるとは、と。皆さんが描かれた部分を自分が清書していったのですが、想像していないことでしたので、印象に残っています。

大河ドラマ「べらぼう」より
大河ドラマ「べらぼう」より / (C)NHK

■蔦重(横浜流星)とのお芝居はすごく有意義で楽しい時間でした

――現存する歌麿の絵からお芝居のヒントも得たと伺いました。どのようなアプローチだったのでしょうか?

歌麿のお話を頂いた際、まだ台本はなかったので、最初にできることは喜多川歌麿の作品を見ることでした。絵というものは表現ですので、そこには人となりが出るのではないかと。作品を見るたびに想像力を掻き立てられましたし、日本画なので2次元ではありつつも、とても奥行きを感じて。この人は何を考えているのだろう、どういう瞬間を切り取ったのだろうということをすごく想像しました。描かれた人物の感情までも想像させられる作品だったので、歌麿という人は、きっと人の気持ちを自分の中に落とし込むことができる、人を見る才能がある方なのではないかと。人の気持ちを自分の気持ちのように考えられる方というのは、すごく繊細な方なのだろうと想像したことが、歌麿を演じる上での最初の入り口でした。

――その後、台本を読まれていかがでしたか?

最初にイメージしていたものは漠然としたものだったのですが、台本が出来上がりそれを読むと、自分の中で点と点が結ばれていくような感覚になりました。森下先生の描かれる歌麿もすごく繊細ですし、ものすごく複雑な気持ちを抱えた人間として描かれていたので、自分自身が想像していたものと結びつけることができました。

――横浜さん演じる蔦重とのお芝居を通してさらに歌麿像ができあがっていったのでしょうか。

やはり蔦重が歌麿という人の感情を引き出してくれていると思うんです。かき乱しもしますが、蔦重の力で歌麿もどんどん成長していく。現場で(横浜)流星くんとお芝居をする中でずっとそのエネルギーをもらっていましたし、流星くんが演じる蔦重を素直に受け止めるということが、自分の中でもとても大事な作業の一つでした。実際に目を合わせて蔦重とお芝居をしていると、その時々でいろいろな感情が出たり隠れたり…台本や絵からイメージしていたものとは違う何かが引き出され、すごく有意義で楽しい時間でした。

――蔦重との多くのシーンの中で、特に印象的だったところは?

少年・唐丸から自分が演じる唐丸に成長して蔦重と再会するところが印象に残っています。自分の中では「べらぼう」のスタートラインでもあり、歌麿と蔦重との微妙な関係性を描く駆け引きという点で、たくさんの心のひだが隠れているシーンでもありましたので印象深いですね。

――そのシーンを経て、その後の方向性が見えたところもあったのでしょうか。

染谷演じる歌麿としては初めて、生身の蔦重と接したシーンでした。実際に対峙したときに蔦重と歌麿の一筋縄ではいかない距離感や関係性を感じ、その最初の気持ちをずっと大事にしていました。

――ご自身が演じたシーン以外も含め、「べらぼうらしいな」と感じたシーンはありますか?

自分が関わっていたということも大きいのですが、やはり写楽の絵が完成した時は感慨深かったです。絵としての表現としては「べらぼう」の中でも最後になりますので、個人的にも胸が熱くなりましたし、歴史が動いた感じがしました。そのオリジナリティあふれる表現もとても「べらぼう」らしいなと思いました。蔦重たちのたわけに、現代の我々もまだ騙されているのではないかと思うような…そんな面白み、楽しみ方もできると感じています。

■“気付かない蔦重”だからこそ魅力的で、それが蔦重なのだと思います

――歌麿はてい(橋本愛)に対してはどのような思いだったと解釈して演じていらっしゃいましたか?

自分の中では、第26回で「品の系図」を作った時からおていさんへの信頼感はあったんです。ですが、蔦重の手前もありますし、それこそ蔦重への思いにずっと蓋をしてきている。そんな中で、写楽を作り上げる際におていさんが歌麿を呼びに来て思いを伝えてくれて。歌麿としては、そこで再び蔦重のところに戻ったことで、蔦重への思い、蔦重との関係が自分の中で完成したんだと思うんです。蔦重とはこういうふうに過ごして、こういうふうに一緒に物を作っていくのがお互いにとって一番いいのかもしれないという、歌麿の答えを自分の中で見つけることができました。蔦重との関係を完結できたからこそ、おていさんに対しても素直になっていけるのではと思います。

――二人の関係性が完結したという点については、どのような思いに至ったのでしょうか。

抽象的でもありますが、歌麿の中にある蔦重への思いは変わらないということを、歌麿自身が認めることができたのだと。その思いに蓋をしていることは自分が苦しいだけですし、だからといってその気持ちを本人にぶつけたとしても、それはそれで傷付くだけで。自分の思いの在り方をどうしたらいいのかと悩み続けてきた歌麿だと思いますが、歌麿の中で、蔦重への気持ちは一生変わらないのだなということを許すことができた。自分でその気持ちを認めることができたという感覚がすごく強かったですね。

蔦重に対する気持ちを自らが肯定することができたことで、吹っ切れたとも思いますし、仕事の上でも家族としても楽しく一緒に過ごせていけたらそれで十分だなという気持ちになれたのではないかなと思います。

――第46回冒頭で、「世の中、好かれたくて役立ちたくて、てめぇを投げ出すやつがいんだよ。そんな尽くし方をしちまう奴がいんだよ!いい加減分かれよ!べらぼうが!」とおていさんのことを蔦重に伝える場面がありましたが、あの言葉は歌麿の気持ちでもあったのでしょうか。

歌麿の気持ちもせりふにのせていましたし、「あんた本当にそういうとこだよ」という(笑)。もう俺が言うしかないなという気持ちでしたね。ですが、言いながらもこの人(蔦重)は変わらないのだろうなという気持ちで言っていたと思います。

――第43回で歌麿が蔦重に「恋をしていたからさ」と告げても蔦重には伝わらないというシーンもありました。染谷さんとしても、何で気付かないのだろうという気持ちだったのでしょうか。

役としてはすごく複雑で辛いのですが、個人的には気付いてしまったら蔦重らしくないなと(笑)。そこに気付かない蔦重、という魅力があると思っていますね。その部分の視座がない蔦重だからこそ魅力的で、それが蔦重なんだなと感じました。そういう鈍感だけれど人情味があるところが、自分はとても好きですね。
大河ドラマ「べらぼう」より
大河ドラマ「べらぼう」より / (C)NHK

大河ドラマ「べらぼう」より
大河ドラマ「べらぼう」より / (C)NHK


■蔦重という人は皆から愛される力があり、皆を愛す力もある

――蔦重に対して愛憎さまざまな思いを抱えながら生きてきた歌麿だったと思いますが、改めて、歌麿にとって蔦重との出会いはどのようなものだったと考えていらっしゃいますか?

蔦重と出会わなければ、“歌麿”にももちろんなっていませんし、絵師として生きていく場所を見つけたからこそ、「べらぼう」においての歌麿は人としてちゃんと生きていく力を身につけていき、成長することができた。蔦重がいなかったら歌麿は生きていけなかった、そんな存在だったと思いますね。

――蔦重と二人三脚でやってきた歌麿です。座長である横浜さんとはとても密に接してこられたと思いますが、どのような共演経験になりましたか。

すごくいい経験をさせていただきました。彼はずっと「べらぼう」のことを考えていましたし、蔦重のことはもちろん、周りのことをとても冷静に捉えて考えていて。一緒にお芝居する時も、2人で方向性を確かめ合いながら、共有しながら、一緒にお芝居することができました。蔦重と歌麿にとって、この場面はどのような表現をしたら「べらぼう」という作品においてベストなのかということをすごく話し合いながらできましたし、実際にお芝居をする中で感じ合うことも多くありました。どこか戦友のような感覚になりましたね。

――染谷さんが改めて感じる、蔦重という人間の魅力を教えてください。

蔦重の魅力は、人の気持ちを分かっているのか分かっていないのか、どこまで狙っているのか狙ってないないのか。天然さもあり、でもすごく器用でちゃんと人情が残っていて、みんなが付いていってしまう。すごく人情味溢れる人柄に魅力を感じますし、皆から愛される力があり、皆を愛す力もあるのだなと、人間としての器の大きさを感じました。メディア王となって世を動かし、人々に影響を与える力があったのだろうなと感じています。

――演じる横浜さんが、蔦重に重なる部分はありましたか?

「べらぼう」という作品の中で、蔦重は本当にずっと出ていますし、ずっと喋っていますし、相当大変だったと思います。そこを見事に走り切っていて、そのエネルギーと、豪華なキャストの皆さんを引っ張っていく力が流星くんにも蔦重と同じようにあると感じました。彼はみんなから愛されていましたし、流星くんも本当に皆さんのことを愛しているんだなということがすごく伝わってきて、そういう部分も蔦重と重なりました。

■役者としても一人の人間としても、すてきな経験でした

――数多くの作品で、さまざまな役を演じられている染谷さんですが、改めて「べらぼう」の歌麿役はご自身のキャリアの中でどのような経験になりましたか?

不思議な経験でしたね。演じていて感じたことのない感情を感じることが多かったです。怒りといっても一言で怒りとは言い切れない感情であったり、例えば蔦重に対する愛情も歌麿の中でもどういう愛情なのか処理しきれなかったり。そういった表現は今まで感じたことがなかったですし、役者としても、一人の人間としても、すごくすてきな経験をさせていただけたなと思います。

――最後に、視聴者の方へメッセージをお願いします。

最終回のラストも本当に「べらぼう」らしい終わり方をしています。自分も最後まで関わらせていただき、蔦重が面白いもの、人々に影響を与えるものを世にぶつけていくという姿勢と、この「べらぼう」という大河ドラマが面白いものを、人々力になるようなものを世間にぶつけていく姿勢というものが、自分としてはすごくリンクしているように感じて。個人的にはメタファー的な気持ちにもなり、この大河ドラマ「べらぼう」も蔦重が作ったのではないだろうかと思うくらいに、たわけ感と面白みを最後まで見ていただけたら感じられるのではないかなと。ぜひ最終回を楽しんでいただけたらうれしいです。

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