美容院脳卒中症候群の代表的な症状や特徴
BPSSの結果として起こる脳卒中は、小脳や脳幹(後方循環)の障害であるため、一般的な脳卒中(顔面麻痺、半身麻痺など)に加えて、特に平衡感覚や視覚に関わる特徴的な症状が現れます。これらのサインを見逃さないことが、早期治療の鍵となります。
前駆症状としてのめまい・吐き気
シャンプー中または直後に出現する回転性の強いめまいと強い吐き気、嘔吐は、BPSSの最も初期のサインであり、小脳や脳幹の血流不足(椎骨脳底動脈不全)を強く示唆します。めまいは、特定の姿勢によって誘発され、姿勢を戻すと一時的に改善する傾向があるのが特徴です。また、血管解離が疑われる場合は首の痛みを伴います。
もしも症状を感じたら、すぐに頭をシャンプー台から上げてもらい、首に負担がかからない姿勢(椅子に座る、可能なら横になる)で安静にすることが最優先です。
数分安静にしても症状が持続する場合、または他の神経症状が加わった場合は、直ちに専門の医療機関を受診する準備をする必要があります。安静にしても症状が改善しない場合は、緊急性が高いと判断します。
脳幹・小脳梗塞の兆候
小脳や脳幹の梗塞は、平衡感覚と運動機能に決定的な影響を与えます。以下の症状は、脳卒中が進行しているサインです。
・ふらつき(運動失調): まっすぐ歩けない、体のバランスが取れないといった症状が現れます。体幹のふらつきが強く、まるで泥酔しているかのように見えます。
・構音障害: 舌や喉の筋肉の動きが悪くなり、ろれつが回らない、言葉がもつれる。
・嚥下障害: 食べ物や水が飲み込みにくい。
・麻痺/しびれ: 体や顔の片側(稀に両側)の脱力感やしびれ(感覚異常)。
対処法と緊急性: これらの重篤な症状が出た場合は、血流障害が進行しているサインであり、すぐに救急車を要請する以外の処置は不要です。これらの症状は生命に直結する危険な兆候であり、極めて高い緊急性があります。
視覚の異常と突然の激しい頭痛
後方循環系(脳幹や小脳)の脳卒中では、視覚に関わる脳の領域も障害されやすいため、視覚異常が多く報告されます。
・視覚異常: 物が二重に見える複視、視界の一部が欠ける(視野障害)、または突然目が見えなくなることがあります。
・突然の激しい頭痛: 血管解離が起こった際、突然「雷に打たれたような」激しい頭痛を伴うことがあります。これは、くも膜下出血の可能性も示唆する緊急性の高いサインです。
・その他の症状: 突然の意識レベルの変化や、認知機能の混乱(錯乱)。
緊急性: 視覚の異常や激しい頭痛は、後方循環系脳卒中の重篤なサインであり、極めて高い緊急性があります。直ちに救急車を呼び、安静を保ちましょう。
美容院脳卒中症候群になりやすい人の特徴
BPSSは誰にでも起こり得るものですが、特にリスクが高まる特定の身体的特徴や既存の生活習慣・疾患があります。これらのリスク因子を把握し、事前に予防策を講じることが賢明です。
年齢層と生活習慣病
症例報告では、BPSSを発症した患者の約80%が女性であったというデータがあります。これは、女性が美容院でシャンプー台を使用する頻度が高く、リスクにさらされる機会が多いためと考えられています。
年齢に関しては、血管の柔軟性が低下し、動脈硬化が進行している50歳以上の方が、特にリスクが高いとされています。
高血圧、糖尿病、高脂血症(脂質異常症)といった生活習慣病を持つ方は、全身の動脈硬化が進行しているため、血管が詰まりやすい状態にあります。動脈硬化した血管は弾力性を失っているため、首が圧迫された際に血流低下を引き起こしやすくなります。
頸部および解剖学的要因
過去に交通事故などで頸部に外傷(むち打ちなど)を受けたことがある方や、慢性的な頸椎症(首の骨の変形)がある方は、首の構造が変化しており、椎骨動脈が骨片や変形した組織によって圧迫されやすくなります。
喫煙は血管を収縮させ、血栓形成を促進するため、BPSSを含むあらゆる脳卒中リスクを著しく高めます。
血管の脆弱性
生まれつき椎骨動脈の一方が細い(低形成)など、血管に左右差がある方は、残る主要な一本が圧迫された際に脳虚血のリスクが格段に高まります。
シャンプー台の角度が固定されており、個人の体型や首の長さに合わせて調整できない状況、あるいは首を反らした状態で長時間(特に10分以上)マッサージなどが行われる場合は、血管への負担が蓄積し、発症リスクが高まります。

