「美容院脳卒中症候群」の症状やなりやすい人の特徴はご存知ですか?【医師解説】

「美容院脳卒中症候群」の症状やなりやすい人の特徴はご存知ですか?【医師解説】

美容院脳卒中症候群の後遺症

BPSSによって引き起こされる脳卒中は、小脳や脳幹に影響を与えるため、後遺症もこれらの部位の機能に関連したものが多く見られ、日常生活に大きな影響を及ぼすことがあります。

運動機能・感覚機能の障害

小脳梗塞の場合、永続的なふらつき(運動失調)が後遺症として残ることがあります。これは、歩行時の不安定さ、体のバランスが取れない、手の震え、細かい動作の困難さとなって現れます。
脳幹などへのダメージにより、手足や顔の片側の感覚が鈍くなったり、脱力(麻痺)が残存する場合があります。
脳卒中の後遺症は、早期の治療と集中的なリハビリテーションによって大幅な回復が見込めます。発症直後(通常は発症から24時間以内)に、専門チームによる集中的なリハビリテーション(理学療法、作業療法、言語聴覚療法)を開始することが、機能回復の鍵となります。

平衡機能・嚥下・構音機能の障害

脳幹の機能が損なわれると、言葉をうまく発することができない構音障害や、食事や水分を飲み込むことが困難になる嚥下障害が残ることがあります。特に嚥下障害は、飲食物が誤って気管に入り込む誤嚥性肺炎のリスクを高めるため、専門的なリハビリが必須です。
平衡感覚を司る機能への損傷により、慢性的なめまいや、眼球の不随意な震え(眼振:がんしん)が残ることもあります。
重度の嚥下障害や構音障害は、回復に時間を要しますが、専門的な訓練と代償的な技術の習得により、日常生活に支障のないレベルまで改善することが期待できます。

再発予防と生活指導

再発予防が最も重要です。BPSSを経験した方は、椎骨動脈に弱点がある可能性が高いためです。
退院後は、医師の指示に基づき、抗血栓薬(血液をサラサラにする薬)を継続的に服用し、高血圧などの持病の管理を徹底する必要があります。また、脳卒中の原因となった「頸部過伸展」を避けることが絶対的な注意点です。美容院でのシャンプーはもちろん、特定のスポーツやストレッチなど、首に負担がかかる行為については、必ず主治医に相談して判断してください。

美容院脳卒中症候群の治療法

BPSSによる脳卒中の治療は、一般的な急性期脳梗塞の治療のルールに沿って、迅速に、時間との勝負で進められます。

超急性期治療:時間依存の薬物療法

病院に運ばれたら、すぐにCTやMRIといった画像検査を行い、脳出血ではないことを確認します。
脳梗塞と診断され、かつ発症から4.5時間以内という時間制限を満たし、出血のリスクがないと判断された場合、血栓溶解薬(t-PA)の点滴投与が最も優先度の高い治療となります。これは、詰まった血管を再び開通させ、脳のダメージを最小限に抑えることを目的とします。治療中は、合併症の予防と全身状態の安定化のため、必ず入院が必要です。

血管内治療:血栓回収療法

t-PA治療に加えて、比較的太い血管が血栓で詰まっている場合、発症から一定の時間内(原則として発症6時間以内など)であれば、カテーテル(細い管)を足の付け根などから挿入し、直接血栓を回収する治療(血管内治療)が選択されることがあります。
この治療は、専門的な訓練を受けた医師によって、大学病院や高度な総合病院で行われます。

特殊な外科的アプローチとリハビリテーション

BPSSの原因が、椎骨動脈を圧迫している骨の突起(骨棘)や生まれつきの血管の異常にある場合、稀にその圧迫源を取り除くための外科手術が検討されることがあります。
薬物治療や外科治療と並行して、理学療法、作業療法、言語聴覚療法を組み合わせた専門的なリハビリが早期に開始されます。リハビリテーションは、退院後も継続することが、長期的な機能改善のために重要です。

配信元: Medical DOC

提供元

プロフィール画像

Medical DOC

Medical DOC(メディカルドキュメント)は800名以上の監修ドクターと作った医療情報サイトです。 カラダの悩みは人それぞれ。その人にあった病院やクリニック・ドクター・医療情報を見つけることは、簡単ではありません。 Medical DOCはカラダの悩みを抱える方へ「信頼できる」「わかりやすい」情報をお届け致します。