「美容院脳卒中症候群」の症状やなりやすい人の特徴はご存知ですか?【医師解説】

「美容院脳卒中症候群」の症状やなりやすい人の特徴はご存知ですか?【医師解説】

美容院脳卒中症候群を予防する方法

BPSSは、体位と環境に起因する疾患であるため、予防は比較的明確で実行しやすいものです。リスクを回避するための最大の鍵は、シャンプー時の頸部の過伸展を避けることにあります。

シャンプー台での適切な姿勢の確保

この予防策の最大の効果は、椎骨動脈が物理的に圧迫されたり、無理に引き伸ばされて傷ついたりするリスクを根本的に回避することです。これにより、血流の途絶を未然に防ぎます。
生活習慣で気をつけることは、シャンプー中に顎が極端に上を向かないよう、首を反らしすぎない姿勢を保ち、可能であれば顎を少し引く「ニュートラル」な角度を意識することです。
最も重要なのは、シャンプーボウルと首の間に、厚手のタオルや専用のクッションを挟んでもらうことです。これにより、首の重さが分散され、血管にかかる圧力を軽減できます。このネックサポートは、多くの専門家によって推奨される、最も効果的な予防策の一つです。

体位の制限と美容師との積極的なコミュニケーション

首を反らした状態を長時間維持することで生じる血管への血流低下や解離のリスクを回避します。また、利用者自身が自分の身体の安全確保に積極的に関わることで、リスクの早期発見につながります。
生活習慣で気をつける点は、首を反らした状態を長時間維持することは避けることです。長時間のマッサージを希望する場合は、一度体位を元に戻す休憩を挟むよう依頼してください。
また、シャンプー中に首に痛み、違和感、めまい、しびれなど、わずかでも異常を感じたら、すぐに施術を中断してもらい、頭を上げることをためらわずに伝えましょう。シャンプー台のボウルと椅子の角度や高さを調整してもらい、自身の体型に最もフィットする、負担の少ない姿勢を見つけるよう協力してもらいましょう。

基礎疾患の徹底的な管理

BPSSの重症化リスクを高める動脈硬化の進行を防ぎ、血管の健康状態を全体的に改善します。健康な血管は、姿勢による一時的な圧迫を受けてもダメージを受けにくく、回復力も高いです。
高血圧、糖尿病、高脂血症は、脳卒中の最大の危険因子です。定期的な通院と内服薬の継続、食事療法を徹底し、血圧や血糖値を適切にコントロールしてください。禁煙は、血管を直接傷つけ、血栓を促進するため、最も積極的に取り組むべき予防策です。

「美容院脳卒中症候群」についてよくある質問

ここまで美容院脳卒中症候群などを紹介しました。ここでは「美容院脳卒中症候群」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

シャンプー中にめまいがした場合、脳卒中を疑った方がいいのでしょうか?

監修医

シャンプー中にめまいを感じることは、必ずしも脳卒中を意味するわけではありません。内耳の異常による「良性発作性頭位めまい症」など、他の原因も考えられます。
しかし、美容院脳卒中症候群(BPSS)の初期症状として、めまいや吐き気は最も重要な警告サインです 。特に脳卒中を強く疑うべき「危険なめまい」には、以下の特徴が伴います。   
・安静にしてもめまいが治まらない、または悪化する。
・強い吐き気や嘔吐を伴う。
・めまいに加えて、以下の症状のいずれかを伴う:
・ろれつが回らない(構音障害)  
・体が強くふらつき、立つことも歩くこともできない(運動失調)
・物が二重に見える(複視)
・顔や手足がしびれたり、力が入りにくい(麻痺)
・突然の激しい首や後頭部の痛み   
これらの症状が一つでも現れた場合、それは椎骨脳底動脈不全が進行しているサインであり、一刻の猶予も許されません。めまい単独ではなく、これらが組み合わさって発症した場合、ためらわずに救急車を要請し、脳神経外科や神経内科の専門医による緊急診断を受けてください。「念のため」の受診が、命と将来の機能予後を左右します。

まとめ

美容院脳卒中症候群(BPSS)は、極めてまれな病気ではありますが、その結果として起こる脳卒中は、小脳や脳幹といった生命維持に重要な部分にダメージを与えるため、決して軽視できません。特に、動脈硬化や頸椎(首の骨)に持病がある方にとっては、シャンプー時の姿勢が致命的な引き金となり得ます。

私たちは、美容院でのシャンプーという日常的な行為を恐れるのではなく、この病気の仕組みと、誰にでもできる予防策を正しく理解し、実行することが最も重要だと考えます。
緊急時には「時間=命」です。 もし脳卒中を疑う症状(特にふらつき、ろれつ、複視、片側の麻痺)が出た場合は、迷わず救急車を要請し、専門的な急性期治療(t-PA療法や血栓回収療法)が可能な施設へ搬送されるよう依頼してください。早期に専門的な治療を受けることが、重篤な後遺症を防ぐ唯一の方法です。

「美容院脳卒中症候群」と関連する病気

「美容院脳卒中症候群」と関連する病気は4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

脳神経系

椎骨動脈解離脳梗塞

一過性脳虚血発作

整形外科系

頚椎症

美容院脳卒中症候群は首をそらすことや首の骨や軟骨の変形によって首を通る血管(特に椎骨動脈)に傷がついて脳梗塞に至ることのある病気で、若年の脳梗塞の原因の一つとして知られています。

「美容院脳卒中症候群」と関連する症状

「美容院脳卒中症候群」と関連している、似ている症状は8個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

関連する症状

首や後頭部の痛み

激しいめまい

まっすぐ歩けない

二重に見える

急に呂律が回らなくなる

飲み込みにくい

顔の感覚が鈍い

手足の麻痺

首の痛みから始まり、めまいや平衡感覚の異常といった脳卒中特有の症状が現れると言われています。上記のような脳卒中を疑う症状があれば、すぐに救急車を呼んで病院を受診してください。

参考文献

 

Weintraub MI.: Beauty parlor stroke syndrome: report of five cases. JAMA, 269:2085-2086, 1993

 

Foye PM, et al.: Pain, dizziness, and central nervous system blood flow in cervical extension: vascular correlations to beauty parlor stroke syndrome and salon sink radiculopathy. Am J Phys Med Rehabil, 81:395-399, 2002

 

Zangbar B, et al.: Beauty parlor stroke syndrome: a rare entity in a trauma patient. Am Surg, 81:E120-122, 2015

 

Kameda T, et al.: Beauty parlor stroke syndrome due to a bone fragment from an osteophyte of the atlas: case report. J Neurosurg Spine. 2018 Apr;28(4):389-394. doi: 10.3171/2017.7.SPINE17226.Epub 2018 Jan 26.

 

Tosunoğlu B, et al.: Vertigo and Ischemic Stroke after Hyperextension (Beauty Parlour Stroke syndrome). Acta Med Litu. 2022 Jun 29;29(2):167–170. doi: 10.15388/Amed.2022.29.2.2

あわせて読みたい

配信元: Medical DOC

提供元

プロフィール画像

Medical DOC

Medical DOC(メディカルドキュメント)は800名以上の監修ドクターと作った医療情報サイトです。 カラダの悩みは人それぞれ。その人にあった病院やクリニック・ドクター・医療情報を見つけることは、簡単ではありません。 Medical DOCはカラダの悩みを抱える方へ「信頼できる」「わかりやすい」情報をお届け致します。