テレビ朝日ビルから外部スタッフ転落か、通行人は負傷…「飛び降り」の法的リスクは?

テレビ朝日ビルから外部スタッフ転落か、通行人は負傷…「飛び降り」の法的リスクは?

イルミネーションで彩られた東京都港区六本木で、転落死事故があった。

報道によると、テレビ朝日本社のビルから転落したとみられ、下を歩いていた通行人の男性が巻き込まれて軽傷を負った。

亡くなったのは、テレビ朝日に勤務する社外スタッフの男性で、産経新聞(12月11日配信)は「本社から飛び降りたとみられる」と報じている。

飛び降り行為に伴う法的リスクについて、澤井康生弁護士に聞いた。

●重過失致死傷罪が成立する可能性がある

高層ビルから飛び降りた結果、通行人を巻き込んで負傷させり、死亡させた場合には、重過失致死傷罪が成立する可能性があります(刑法211条)。

繁華街に建つ高層ビルでは、直下の路上を多数の通行人が行き来していることは容易に予測できます。

そのような場所から飛び降りれば、他人を巻き込む危険性も予見できるといえるため、重過失によって他人を死傷させたと評価される可能性があるのです。

ただし、飛び降りた本人が死亡した場合、何らかの刑事責任が生じうるとしても、逮捕や起訴はされないため(刑事訴訟法339条)、事実上立件されることはありません。

●民事上の責任は相続される

飛び降りた人が通行人を負傷させた場合、過失による不法行為(民法709条)が成立し、被害者に対する損害賠償責任を負うことになります。

飛び降りた本人が亡くなっても、その損害賠償債務は金銭債務として相続の対象となります。そのため、相続人が損害賠償債務を承継することになるが、相続放棄をすれば、プラス・マイナスを含めた一切の相続財産を受け継がず、損害賠償債務を免れることが可能です(民法939条)。

家庭裁判所で相続放棄を申し述べて受理されれば、放棄者はすべての相続財産の承継を拒否できる仕組みとなっています。

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