居酒屋やレストランを選ぶにあたって、「個室」があるかどうかは、多くの人にとって重要な判断材料になります。
特に「完全個室」といった表現を見ると、プライバシーが保たれた特別な空間を期待してしまうものです。
会社員の男性Aさんは、会社の忘年会のため、「個室あり」という謳い文句に惹かれて都心の居酒屋を予約しました。
ところが、実際に案内されたのは、広いフロアの一角を仕切っただけの「なんちゃって個室」。期待とのギャップにがっかりしたといいます。
さらにコースメニューの「スイーツ」が電子レンジで温めただけの「一口サイズの冷凍たい焼き1個」だったことも、苦い思い出になりました。
グルメサイトや飲食店のホームページでは、「個室」「完全個室」「半個室」といった表示をよく見かけます。飲食店の「個室」には法律上の定義があるのでしょうか。飲食店の問題にくわしい石崎冬貴弁護士に聞きました。
●飲食店の「個室」を定める法律はない
──居酒屋やレストランの「個室」(あるいは「完全個室」「半個室」)を定める法令はあるのでしょうか。
店舗や建物の一部を区切ることによる何らかの制限という意味では、食品衛生法、風営法、建築基準法、消防法などさまざまな規制がありますが、消費者が一般的にイメージする「個室」を直接的に定義する法律はありません。
●実態と違うのに「完全個室」とPR→優良誤認もありえる
──では、どんな状態であれば「個室」と言えるでしょうか。
法律上の定義がない以上、一般常識や社会通念で判断することになります。
一般消費者が「個室」と聞いて想起するのは、壁や扉で仕切られ、他の客から視線や会話が一定程度遮られる空間だと思います。
一方、カーテンやパーテーションで区切っただけの席は「半個室」と呼ばれる場合もあり、いわゆる「個室」と言えるかは微妙です。
個室といえるような間取り、設備が実際にはないのに、「完全個室」などと宣伝した場合、景品表示法の優良誤認や有利誤認にあたり、行政処分(措置命令や課徴金納付命令)の対象となる可能性も考えられます。


