「インフルエンザ感染拡大」が止まらない! 感染動向と今年のウイルス型を医師に聞く

「インフルエンザ感染拡大」が止まらない! 感染動向と今年のウイルス型を医師に聞く

インフルエンザ感染者数増加への受け止めは?

インフルエンザ感染者数増加への受け止めは?

編集部

最後に、インフルエンザ感染者数増加への受け止めを教えてください。

吉野先生

今年の流行は、例年よりも早い時期から始まり、規模も大きくなっています。なぜここまで早く、そして強い流行になっているのかを一つの理由に絞ることはできませんが、いくつかの背景が重なっていると考えられます。COVID-19が流行していた数年間、マスクや行動制限の影響によるものかインフルエンザそのものがほとんど流行せず、多くの人がインフルエンザに触れないまま過ごしてきました。その結果、社会全体としてインフルエンザに対する免疫が下がっていた可能性があります。さらに、海外との往来やインバウンドが戻り、人の動きが活発になったことで、ウイルスが人の移動に乗って国内に入り、広がりやすい状況になっていると考えられます。インフルエンザウイルスは自分では動けず、人の体の中で増え、人と一緒に動いていく存在であり、人の流れが活発になるほど、どうしても広がりやすくなります。
現在の流行の主役はA型のH3N2(AH3亜型)というタイプで、その中でも「サブクレードK」と呼ばれる、これまで日本でよく見られていたタイプとは性質が少し異なるグループのウイルスが目立っています。インフルエンザウイルスは「抗原ドリフト」と呼ばれる連続的な変化を起こしながら、抗原性、つまり私たちの免疫やワクチンから見え方が少しずつ変わっていきます。そのため頻繁に流行する型が入れ替わります。今回流行しているサブクレードKは、従来のH3N2と比べて免疫との“相性”がやや異なる可能性があり、今季の強い流行と関係していると考えられます。
加えて、現在主に使われているインフルエンザワクチンの多くは、鶏卵の中でウイルスを増やしてから不活化して作る方式です。H3N2はもともと変化しやすいタイプですが、ワクチン製造の過程でウイルスを繰り返し卵の中で増やしていくと、卵の環境になじむ方向に変化する「卵馴化」が起こることがあります。その結果として、実際に人の間で流行しているウイルスと、卵で増やして作られたワクチン株の抗原性のあいだにわずかなずれが生じる場合があります。このずれが大きいシーズンには、特にH3N2に対して、感染そのものを防ぐ力が十分に発揮されにくいことがあり、今回のような流行規模の大きさの一因になっていると考えられます。
とはいえ、そのような条件が重なっているシーズンでも、インフルエンザワクチンには重症化や入院のリスクを下げるという大切な役割があります。今季は流行が強く、学級閉鎖なども目立ちますが、私たちが取るべき基本は変わりません。ワクチン接種や手洗い、場面に応じたマスク着用、具合が悪いときに無理をしないといった日常の感染対策を丁寧に続けること、そして気になる症状が出たときには受診のタイミングを逃さず、必要なときに適切な医療につながることが、今季の流行を乗り切るうえで何より重要です。

編集部まとめ

全国的にインフルエンザの流行が続いており、今後も注意が必要です。流行状況は地域差があるため、自治体や医療機関が発信する最新情報をこまめに確認し、体調管理や基本的な予防対策を心がけることが大切です。無理をせず、気になる症状がある場合は早めに医療機関へ相談しましょう。

配信元: Medical DOC

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