自分はまだ後輩なんだ!ってそれがすごく嬉しかった
――役そのものに〝なる〟領域というか。
「今回の姫乃ちゃんがまさにそうですが、生まれて初めて映画に出たときって、それまで生きてきた自分がわりとそのまま映るじゃないですか。それが作品を重ねていくことで〝職業の人〟になっていく。柴咲さんやオダギリ(ジョー)さんは、その〝職業の部分〟を捨てられる方たちだと思います。たくさんの要素から映画が成り立っていることをよく知っているからこそ、芸事だけに集中せずに、生活のことも手探りで取り組んできたんだなと。私も近いタイプかと思いますが、その域って映画をやってきた年数に比例するのでは、と今回思いました。完成した作品を観て、私ってまだしっかり後輩だ! と発見して。それがすごく嬉しかったです」
――満島さんはおふたりが共演した『メゾン・ド・ヒミコ』(05)世代ですもんね。
「試写で本作を観たとき、本当にいい〝日本映画〟だと感じました。どこかの影響を受けていない、純粋な日本の作品だなって。その中にいる柴咲さんやオダギリさんを観て〝うわーすごい。映画の中で光る役者さんたちだ〟とゾワゾワして、〝そうだ、若いときにこの人たちの映画を観てたんだ私〟と思い出しました。おふたりとも決してやり過ぎたお芝居をせずずっと自然でいるのに、奥底に映画への静かで強い愛情があるのが伝わってきたんです。私はまだここまで行けていないかもしれない、やっぱりおふたりは先輩なんだと改めて感じました」
――素敵ですね。今後の活動におけるモチベーションにもなったのではないでしょうか。
「すごくなりました。自分が後輩だと認識したことで、映画に出たいなと思っていたけれどまだ俳優ではなかったころを思い出したり、芸能事務所に属していたときにスタッフの方々にかけてもらった言葉が蘇ってきたりして。私は親元を離れるのが早かったぶん映画の現場で大人たちに育ててもらってきたんだな、と感慨深い気持ちになりました。オダギリさんとは『夏の砂の上』でも共演しましたが、同作ではプロデューサーも兼任されていて『満島さんもこっち向きだと思うよ』と言ってもらえて……挑戦するかもしれません」
©2025 「兄を持ち運べるサイズに」製作委員会
――満島さんがプロデュース業を! 早速、新たな挑戦を実践しているのですね。
「分からないこともたくさんあるので勉強しながらですが。でも今のペースで取り組んでいると、人生で参加できる映画はあと何本あるんだろうとも思ってしまいます。アグレッシブに仕事をしていればもっとバンバン作品数を重ねられるのでしょうが、今は丁寧ゾーンに入っていてどうしても本数が減ってしまう。だけど何となく、面白い俳優でいられる自信はあるんです(笑)」
――『ラストマイル』公開時に、週休二日制を取り入れたお話をされていましたよね。ご自身の最適なペースで続けていくスタイルは一貫しているように感じます。
「水分を美しく保っていたいというお話をしましたが、それにはからだを休める時間も、生活を豊かにしていく時間も大切だなぁとやっぱり感じます。多くの人が関わる中で物事が進んでいくとき、そのスピーディな流れを楽しむか丁寧にいくか考えつつ、どっちもの時期もありましたが、今は後者に舵を切っています。今年は半分ほどを海外で過ごして、今までできなかった経験もいくつかしました。時代も年齢もあると思いますが、世界に対しても映画や演じることに対しても、ようやくリラックスできてきたなって感じているところです」
©2025 「兄を持ち運べるサイズに」製作委員会
Profile_みつしま・ひかり/97年に音楽グループ「Folder」でデビュー後、俳優を軸に多彩に活動。近作に『ラストマイル』『夏の砂の上』『cocoon ~ある夏の少女たちより~』『ホウセンカ』ほか。毎週放送中の「アイラブみー」では70役以上の声を担当。
photograph:MAI KISE hair:ASAMI MAEDA
make-up:YUMI ENDO[eight peace] text:SYO(P20-21)
model:HIKARI MITSUSHIMA coordination:MASAÉ TAKANAKA
thanks:ÉCOLE DE CURIOSITÉS, MAISON BY SOTA ATSUMI
©2025 「兄を持ち運べるサイズに」製作委員会
otona MUSE 2026年1月号より

