予防と治療の新しいアプローチ
編集部
診断の先にある予防や治療には、どのような方法があるのでしょうか?
市川先生
基本は食事療法と運動療法です。減塩、バランスのとれた栄養、適度な有酸素運動が生活習慣病と心臓病の両方に効果を発揮します。そのうえで、必要に応じて薬物療法をおこないます。降圧薬で血圧を下げ、スタチンでLDLコレステロールを管理します。さらに近年注目されているのが、「糖尿病治療薬の新しい役割」です。
編集部
糖尿病治療薬の新しい役割について、詳しく教えてください。
市川先生
SGLT2阻害薬は腎臓でブドウ糖の再吸収を抑えて尿に排泄させることで血糖を下げますが、それだけではありません。大規模臨床試験(EMPEROR試験、DELIVER試験、DAPA-HFなど)にて、心不全入院や心血管死を減少させる効果が示されています。また、GLP-1受容体作動薬は食欲を抑制し体重を減らす効果を持ちますが、LEADER試験やSUSTAIN-6試験で動脈硬化性心血管疾患のリスクを下げることもわかっています。
編集部
糖尿病治療薬が「心臓を守る薬」になっているのですね。
市川先生
その通りです。今は「心腎代謝連関」という考え方が重視されていて、糖尿病・心疾患・腎疾患を一体として治療する時代になっています。患者さんの年齢、合併症、生活習慣に応じて薬をオーダーメイドで選び、心臓を守る戦略を立てていきます。
編集部まとめ
生活習慣病と心臓疾患は「見えない糸」で強く結びついており、放置すれば重大なリスクを招きます。健診や外来での基本検査に加え、心エコーや冠動脈CTなどの早期検査でリスクを可視化することが重要です。さらに近年は、SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬といった糖尿病治療薬が「心臓を守る治療薬」として位置づけられ、心腎代謝を一体で捉える新しい治療戦略が広がっています。生活習慣病と診断されたら、それは心臓に赤信号がともっているサイン。早期に検査を受け、予防と治療に一歩踏み出すことが、健康寿命を延ばす最善の方法といえるでしょう。

