「健康のために、毎日水を2リットル飲みましょう」。この言葉を信じて、毎日意識的に水分を摂っている方も多いのではないでしょうか。しかし、この説は万人にとっての正解ではないことをご存じでしょうか。最新の研究で分かってきた本当に大切なことは、飲む「量」ではなく、「何を飲むか」という“選び方”と、「何から食べるか」という“順番”だといいます。広く信じられている「水2リットル神話」をエビデンスに基づいて検証し、血糖値を本当にコントロールするために、今日から実践できる最も確かな方法について、「YouTube医療大学」を運営する総合診療科の医師、舛森先生に伺いました。

監修医師:
舛森 悠(YouTube医療大学)
2019年旭川医科大学卒業後、札幌にて初期研修をおこない、函館稜北病院総合診療科へ。北海道内の3次救急を担う救命救急センターなどを経て、現在は千葉大学大学院 医学薬学府 先進予防医学共同専攻 博士課程にて研究に従事。並行して北海道での地域医療に貢献し、登録者86万人を誇る「YouTube医療大学」を運営。一般社団法人とまりぎケア代表理事、総合診療専門医、新家庭医療専門医、認知症予防専門医、医師会認定産業医。
「水2リットル神話」の真実 目指すべきは“適正な水分状態”
編集部
はじめに、「1日2リットルの水を飲むのが健康に良い」というのは本当でしょうか?
舛森先生
いえ、正確に合っているとは言い切れません。この説の元になったのは「1日8杯の水を飲む(約1.9リットル)」という古い話で、20年以上前からエビデンスが乏しいと指摘されていました。
編集部
具体的にどのようなことが問題なのでしょうか?
舛森先生
最大の誤解は、「食事から摂る水分を考慮していないこと」です。私たちはご飯や味噌汁、野菜や果物からも、1日およそ1リットルの水分を摂取しています。つまり、飲料だけで2リットルを目指すと、人によっては過剰になることもあるのです。
編集部
では、本当に必要な水分量はどのくらいなのか教えてください。
舛森先生
必要量は年齢や体重、活動量、季節などで変わります。炎天下で働く方とデスクワーク中心の方では、当然必要な水分が違いますよね。目安としては「尿の色」に注目してください。「透明すぎる場合は飲みすぎ」「濃い黄色の場合は水分不足」です。理想は「薄いレモン色」と言われており、「のどが渇いた」と感じる前にこまめに摂るのが理想です。
血糖値を下げるには「飲料の置き換え」から
編集部
適切な水分量についてわかりました。では、血糖値を安定させるために“まずやるべきこと”は何でしょうか?
舛森先生
最もシンプルで効果が高いのが、「砂糖入り飲料をやめて、水やカフェインレスのお茶に置き換えること」です。ジュースや甘い炭酸飲料、加糖コーヒー、そして意外な落とし穴であるスポーツドリンクなどは、液体の糖分が急速に吸収されて血糖値スパイクを起こします。
編集部
詳しく教えてください。
舛森先生
実際、2023年にイギリスの医学会誌「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(British Medical Journal)」に掲載された研究では、2型糖尿病の患者さんが砂糖入り飲料を水に置き換えるだけで、総死亡リスクや心血管疾患のリスクが有意に低下したと報告されています。つまり、新しい健康法を“足す”よりも、まずは血糖値を乱す習慣を“引く”ことが何より大切なのです。
編集部
「水を飲むタイミングを工夫すると血糖値が下がる」といった話も聞きますが、それより効果的な方法はありますか?
舛森先生
はい。私がおすすめするのは、「食べる順番」と「食前の水」という2つのテクニックです。まず「食べる順番」については、
① 野菜・きのこ類(食物繊維)
② 肉・魚(たんぱく質)
③ ご飯やパン(炭水化物)
の順に食べることで血糖値を下げる効果が期待できます。信頼性の高い複数の研究で、この「食べ順」を実践するだけで食後血糖値とインスリン分泌を大幅に抑制できると証明されています。最初に食物繊維を摂ることで、糖の吸収がゆるやかになるのです。
編集部
「食前の水」についても教えてください。
舛森先生
食事の30分前にコップ2杯(約500ml)の水を飲むと、満腹感が高まり自然と摂取量を減らすことができます。これは直接血糖値を下げるわけではありませんが、体重管理を通じて血糖コントロールを助ける効果があります。ただし、心臓や腎臓に病気があり水分制限がある方は、主治医に相談してからおこなってください。

