プロテインシェイクは運動をする方だけのものではなく、普段の食生活においても栄養バランスを整える手段として活用できます。忙しい毎日の中で不足しがちなタンパク質を補う方法として、また高齢期の健康維持にも役立つ可能性があります。ここでは日常的な栄養補給の観点から、食事バランスの改善と高齢者の方への効果について解説します。
監修医師：
濱木 珠恵（ナビタスクリニック新宿）
北海道大学医学部を卒業後、国立国際医療センターにて研修。
虎の門病院、国立がんセンター中央病院で造血幹細胞移植の臨床研究に従事。都立府中病院、都立墨東病院での血液疾患診療を経て、2012年にナビタスクリニック東中野院長、2016年よりナビタスクリニック新宿院長に就任。
貧血外来や女性内科などで女性の健康をサポート。
【専門・資格・所属】
血液内科、貧血、女性内科、内科一般
日本血液学会 専門医
日本内科学会 認定医
日常生活における栄養補給の効果
プロテインシェイクは筋力トレーニングを行う方だけでなく、日常生活においても栄養補給の手段として活用できます。食事のバランス改善や高齢者の栄養状態改善など、一般的な生活シーンでの健康効果について見ていきます。
食事のバランス改善と栄養不足の予防
現代の食生活では、タンパク質が不足しやすい傾向にあります。特に朝食を抜く習慣がある方や、簡単な食事で済ませることが多い方は、必要なタンパク質量を確保できていない可能性があります。厚生労働省「日本人の食事摂取基準（2020年版）」によると、成人の1日あたりのタンパク質推奨量は、体重1kgあたり0.8gから1.0g程度とされています。
プロテインシェイクは、手軽に準備できるため、忙しい朝や時間がない時の栄養補給に適しています。1回分のシェイクで15gから25g程度のタンパク質を摂取できることが多く、食事での不足分を補う手段として有用です。体重60kgの方であれば、1日に48gから60g程度が目安となります。食事だけでこの量を確保することが難しい場合、プロテインシェイクを活用することで、必要量を無理なく満たすことができます。
ただし、プロテインシェイクは食事の代替ではなく、あくまで補助的な役割として位置づけることが大切です。タンパク質以外にも、ビタミン、ミネラル、食物繊維など、身体に必要な栄養素は多岐にわたります。通常の食事を基本としながら、不足分を補う形でプロテインシェイクを利用するといいでしょう。
高齢者の栄養状態改善への寄与
高齢になると、食事量の減少や消化吸収能力の低下により、タンパク質不足に陥りやすくなります。タンパク質不足は筋力低下や免疫機能の低下を招き、日常生活動作の低下につながる可能性があります。特に75歳以上の高齢者では、フレイル（虚弱）の予防が重要な健康課題となっています。また高齢者特有の健康課題であるサルコペニア（加齢による筋肉量と筋力の低下）の予防にも、適切なタンパク質摂取が重要です。
プロテインシェイクは、少量でも十分なタンパク質を摂取できるため、食が細くなった高齢者の栄養補給に適しています。固形物を食べることが負担に感じられる場合でも、液体であれば摂取しやすく、消化への負担も比較的少ないという利点があります。ただし、個人の健康状態や基礎疾患によっては、タンパク質の摂取量に制限が必要な場合もあるため、医師に相談したうえで利用することが望ましいです。
まとめ
プロテインシェイクは、適切に活用すれば健康維持やダイエットに役立つ有用なツールです。健康効果やメリットを理解し、デメリットや飲みすぎのリスクにも注意を払いながら、自分の目的や身体の状態に合わせて利用することが大切です。タンパク質の必要量は個人差が大きく、年齢や性別、活動量、健康状態によって異なります。不安な点がある場合や、基礎疾患をお持ちの方は、医師や管理栄養士などの専門家に相談したうえで取り入れることをおすすめします。バランスの取れた食事と適度な運動を基本としながら、プロテインシェイクを補助的に活用し、健やかな生活を目指していきましょう。
参考文献
厚生労働省「日本人の食事摂取基準（2020年版）」
国立健康・栄養研究所「健康食品の安全性・有効性情報」
