刑務所を出た人たちを受け入れる施設への委託費が、国の予算不足に直面している。その影響で、実際に利用者が施設側から早期退所を求められるケースが確認されている。
東京都内のある自治体議員は、施設の入所者から「仕事も住まいもなく、どうしたらいいのか」と相談を受けたとして、議会で「無視できない影響が生じる」と懸念を示した。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)
●「予算厳しく入所を短くせざるを得ない」に利用者が困惑
12月3日の東京都国立市の市議会本会議で、共産党の矢部新(あらた)議員が「先日、ある緊急の相談を受けました」と切り出した。
相談者は、刑務所を出た後に原則6カ月滞在できる「更生保護施設」に入所。半年の間に家探しや就職活動をする予定だったが、施設側から突如「2カ月ほどで出て行ってほしい」と告げられたという。
「仕事も住まいもなく、どうしたらいいのか?」。不安を抱えた相談者の話を矢部議員がさらに聞き進めると、施設の職員から「施設運営の予算が厳しいので、入所期間を短くせざるを得ない」と打ち明けられたという。

●「再犯防止の観点からも大きな懸念」
矢部議員はその後、委託費不足を報じた弁護士ドットコムニュースの記事を読み、国が更生保護施設や自立準備ホームに対して、対象者一人当たりの受け入れ期間を「65・3日以内」に抑えるよう求めていたことを把握した。
施設との交渉により、この相談者は滞在期間を延ばすことができたが、途中から食事の提供はなくなったという。矢部議員は「相談者の話はこの報道とぴったり一致します」と指摘し、こう続けた。
「一概に施設側が(相談者を)着の身着のまま放り出したというわけではないようですが、重大な問題であることに変わりはありません。何より、すでに罪を償った人を困窮状態へと追い込むことになりかねませんし、施設の運営や再犯防止の観点からも大きな懸念が生じます」


