佐賀県警科捜研でDNA鑑定不正 県警は第三者調査を拒み、信頼失われ…全国にも波及か

佐賀県警科捜研でDNA鑑定不正 県警は第三者調査を拒み、信頼失われ…全国にも波及か

九州の佐賀県で、警察や検察の捜査のあり方に根本的な疑念を抱かせる大問題が明らかになった。一体、何が起きているのか。そして、その影響はどこまで及ぶのか。

佐賀県弁護士会「佐賀県警鑑定不正問題PT(プロジェクトチーム)」の半田望弁護士に、この問題の深刻さと、幕引きを急ぐようにも見える捜査機関側の対応について寄稿してもらった。

●佐賀の科捜研で7年に及ぶ不正、今年9月に公表

佐賀県警は9月8日、記者会見を開き、科学捜査研究所(科捜研)に所属する40代の男性技術職員が2017年6月〜2024年10月の間にわたり、DNA型鑑定で虚偽の書類作成などの不正行為(本件不正)を繰り返していたことを明らかにした。

私は当日、日弁連の委員会のために東京にいたが、ニュース速報を見て、すぐにこう感じた。

「これは、刑事手続きにおける科学鑑定の信頼を根底から揺るがす問題だ。一個人の問題ではなく、警察組織と科学鑑定全体の問題として扱うべき極めて重大な不正である」

その後、佐賀に戻る道中で、佐賀県弁護士会の出口聡一郎会長や杉山林太郎・刑事弁護委員長と協議し、弁護士会として速やかに毅然とした対応を取る方針を決定した。

弁護士会は本件不正についてPTを立ち上げ、会長声明・談話を出すとともに、県議会や国会議員との意見交換、佐賀県警・公安委員会への申し入れなどをおこなっている。

●弁護士会への説明は今なおなし

佐賀県弁護士会は会長声明で、

(1)第三者機関による調査を実施
(2)本件不正の全容解明
(3)具体的事件への影響の有無

を精査するよう求めた。

もし不正な鑑定により、不当な扱いを受けた被疑者・被告人、あるいは犯罪被害者がいた場合、速やかな救済が必要である。また、佐賀県警科捜研のみならず、全国の科捜研でも同様の問題が起こりうるという前提で、科学鑑定の適正化を求めている。

ただ、現時点までに佐賀県警や公安委員会から、佐賀県弁護士会への説明は一切されていない。

なお、本稿は、報道などをもとに筆者の私見として問題点を整理するものであり、佐賀県弁護士会の意見を代表するものではないことをお断りする。

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