●当初、記者会見を開かなかった佐賀県警
佐賀県警は当初、本件不正について記者会見を開かず、職員の懲戒処分の説明だけにとどめ、報道機関による写真撮影は不可としていた。
職員の懲戒処分という不祥事を「ぶらさがり」取材で終わらせることに対して、報道各社が抗議し、その結果として、首席監察官による記者会見がおこなわれ、冒頭部分の撮影が許可された。
佐賀県議会との関係でも、佐賀県警からの情報提供は小出しになされたようであり、県議会が県警の対応に不信感を持ち、後述の決議がされる一因となったことは否めない。
佐賀県弁護士会では本件不正の発覚後、直ちに会長声明(2025年9月10日付)を発出し、内部調査だけで幕引きにするのではなく、第三者による透明性のある調査を実施するよう求めた。
佐賀県弁護士会が第三者による調査を求める理由は、本件不正が刑事訴訟の目的である「事案の真相解明」を妨げるものであり、また高度の専門性・中立性が担保されるべき科学鑑定について、7年余り不正がおこなわれてきたことは極めて重大かつ深刻な不正であるとの考えに基づく。
また、日弁連や九州弁護士会連合会のほか、各地の弁護士会も同趣旨の声明を出している。
●県議会も決議「警察組織の透明性、信頼性を大きく損なう」
これに対して、佐賀県警は第三者による調査の必要性を否定し、福田英之・県警本部長も県議会での一般質問で同趣旨の答弁を繰り返した。
しかし、警察の内部不正を内部調査のみで問題なしとした姿勢には、市民からも強い非難の声が向けられ、10月2日の佐賀県議会で「不祥事の再発防止と県民への信頼回復を求める決議」がされた。
決議では本件不正が「刑事司法制度の信頼を根底から揺るがし、県民に深刻な不安と不信を与える重大な事案」と指摘し、また本件不正が7年余りにわたって見過ごされてきたことについて「内部管理の甘さ、組織のチェック体制の不備が明らかになった」と断じている。
不正発覚後の情報公開についても「初動から丁寧さを欠き、不十分であったことは極めて深刻で、警察組織の透明性と信頼性を大きく損なう」と批判し、独立性、透明性、専門性を備えた第三者による調査をおこなうことや、警察庁などに指導・助言を求めて組織改革や再発防止策の具体化、組織風土の改善、職員教育の徹底を図ることを求める内容となっている。
また、佐賀県弁護士会も、佐賀県議会の決議やそれに先立つ県警本部長の議会での答弁を踏まえて、9月22日付と10月3日付で追加の会長談話を出して、佐賀県警に対して申し入れもおこなった。
なお、10月8日から警察庁による特別監察が始まり、11月28日付で中間報告の結果が公表された。これについての評価は後編で述べる。また、佐賀県警は依然として第三者調査を否定したままだ。

