警察を「電話で呼ぶふり」で保育士懲戒、やりがちな親も虐待か? 弁護士が教える「しつけ」との境界線

警察を「電話で呼ぶふり」で保育士懲戒、やりがちな親も虐待か? 弁護士が教える「しつけ」との境界線

言うことをきかない子どもの前で、電話口に向かって「警察を呼ぶ」ふりをするのは、しつけの一環として許容されるのか。それとも虐待とみなされることもあるのだろうか。

そんな疑問を考えさせる出来事が報じられた。

警察に限らず、鬼やお化けの存在を持ち出して、子どもを言い聞かせようとしてしまう親も多い。こうした「脅し」を伴うしつけについて、法的観点から考える。

●おもちゃの取り合いで「警察ですか。すぐ来てください」

毎日新聞によると、千葉県旭市の保育所で働く保育士が、「警察を呼ぶふりをして園児を脅した」などの事情から、懲戒処分(戒告)を受けたという。

「保育所内でおもちゃの取り合いをしていた2歳児クラスの男児を注意する際、男児の服をつかんで胸に擦り傷を負わせたほか、自身のスマートフォンを持って『警察ですか。すぐ来てください』などと話し、警察を呼ぶふりをして脅したとされる」(11月28日/毎日新聞)

「警察を呼ぶよ」「おまわりさんに来てもらうよ」「牢屋に入るよ」といったセリフは、多くの親にとって「つい使ってしまうフレーズ」かもしれない。

また「早く寝ないと鬼がくるよ」「山姥がもう近くまで来ている。帰ってもらえるように今ならお願いできる」など、鬼や妖怪をダシにしたしつけも珍しくない。過去には「鬼から電話がかけられてくる」というサービスが議論を呼んだこともある。

得体の知れない存在や警察などが、子どものしつけに使われるのは古くからある。

子育ての疲弊から「使わざるをえない」という保護者や保育士も少なくないだろう。ただし、法的にはどのように整理されるのか。家族問題にくわしい玉真聡志弁護士に聞いた。

●一度きりであれば「虐待」にはあたらないのではないか

──親が子どもに対して「警察に電話するふり」「鬼さんに電話するふり」をする行為は、虐待と判断される可能性はあるのでしょうか。

結論としては、親がしつけをする目的で「警察に電話をする」ふりをする場合には、子どもに対する「心理的虐待」がおこなわれたというほどの状況ではないと思われます。

しかし、「警察に電話するふり」をされて畏怖し、親の指導に従う意思を見せている子どもに対し、さらに続けて「警察に電話をするふり」をした場合、トラウマ等の「著しい心理的外傷を与える」おそれがあるため、「心理的虐待」と判断される可能性は出てきます。

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