警察を「電話で呼ぶふり」で保育士懲戒、やりがちな親も虐待か? 弁護士が教える「しつけ」との境界線

警察を「電話で呼ぶふり」で保育士懲戒、やりがちな親も虐待か? 弁護士が教える「しつけ」との境界線

●「言葉で脅す」ことは「心理的虐待」に該当する

──どういうものが心理的虐待にあたるのでしょうか。

児童虐待防止法2条では、保護者による児童虐待には「4つの類型」があります。

(1)身体的虐待(2)性的虐待(3)ネグレクト(4)心理的虐待の4つです。

このうち(4)心理的虐待は、「児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応…その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動」と定義されています(同法2条4号)。

つまり、児童に「著しい心理的外傷を与える言動」が「心理的虐待」となります。

次に、行政官庁では、「心理的虐待」の具体例として以下の事情が挙げられています。

【子ども家庭庁】「言葉による脅し」「無視」「兄弟間の差別的扱い」「子どもの目前でのDV」

【厚生労働省】「ことばによる脅かし、脅迫」

子ども家庭庁も厚労省も、行政官庁の定義では「言葉で脅す」ことが、心理的虐待の一例とされているのがわかります。

児童に「著しい心理的外傷を与える言動」の具体例が、児童を「言葉で脅す」ことであると整理できると思います。

●おびえた子どもにさらに「警察を呼ぶふり」は虐待にあたりえる

──「警察に電話するふり」「鬼に電話するふり」は「言葉で脅かす」にあたるのでしょうか。

親がしつけの目的で「警察に電話するふり」をして子どもを叱る場合、一度「ふり」をするたびに子どもも反省して従う意思を示すのであれば、子どもに「心理的外傷」が残らないだろうといえます。

そのため、このレベルでの「警察に電話するふり」は「心理的虐待」には該当しないだろうと思います。

ただし、親が「警察に電話するふり」をして子どもが反省の様子を見せたり、子どもが本気で畏怖したりする状況にあるにもかかわらず、さらに「警察に電話するふり」をすることは、子どもの恐怖、怯えを固定化して子どもに「心理的外傷を与える」おそれがあったり、場合によっては子どもを「言葉で脅す」ことになりかねません。

この場合には、子どもに対する「心理的虐待」がおこなわれたといえます。

昔から使われがちな手法だとは思われますが、どうしても「警察に電話をする」ふりをしなければならないことがあるのであれば、お子さんの様子を見ながら使ってほしいと思います。

提供元

プロフィール画像

弁護士ドットコム

「専門家を、もっと身近に」を掲げる弁護士ドットコムのニュースメディア。時事的な問題の報道のほか、男女トラブル、離婚、仕事、暮らしのトラブルについてわかりやすい弁護士による解説を掲載しています。