吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
少しだけ高齢者と保護犬問題
5年日記をつけています。数行ほどのスペースでメモ程度のことしか書けないのですが、備忘録として振り返るのにはちょうどいい日記です。
5年目に入り、あと20ページほどで1冊が終わります。
5年前、2021年の晩秋以降の日記には、トイプードルのラニの病状についての記述が多くなっていました。
「ごはんの食べない、どうしようか」
「M先生のクリニックへ。5時間点滴で少し元気になったか」
「腎臓の数値、少し良くなってる!」
15歳、目に見えて弱くなっていくのが分かり始めた頃でした。
そして2022年の後半は、彷徨っているような記述が続きます。
ぽっかりと、自分の中に大きな穴が空き、それを何で埋めていいのかわからない、そんな状態でした。
ラニが亡くなって、何となく見始めた保護犬サイトがありました。
するとある時、ラニにそっくりなワンコが保護され、仮につけられた名前が『プリン』。
ラニは、時々、ほんの少しだけ舐めさせてもらうプリンが大好きだったのです。
考えてみると、その時にプリンちゃんを引き取っていたらよかった。
毎日、預かりさんで過ごすプリンちゃんの様子をブログで見ながら、ラニを抱っこした時の感触を思い出していました。
保護犬を譲渡してもらうには様々な条件があります。
飼育できる環境であることはもちろん、引き取り手の家族の状況というのも条件の一つになります。
そして何よりも厳しいのが年齢制限です。
多くの保護犬シェルターの条件では、『里親となる資格は60歳まで』とあります。
それはそうですよね。高齢で引き取って、里親が亡くなってしまったらまた孤児になってしまう。
私たち夫婦はもうその資格を失っているので、保護犬を引き取るのは難しいのです。
だからと言って子犬から飼うのはさらにリスクがあります。
保護犬たちは、考えられないような過酷な環境の中で育てられています。
いや、育てられるというより、人間の都合のいいように飼育されています。
繁殖犬の女の子は何回も子どもを産まされます。
吠えを軽減するために声帯を切られた子もたくさんいます。
何といっても、名前がない。
狭いゲージの中で、散歩もしたことがない、洗ってもらうこともない。
病気を抱えた子も多くいます。それでもわんこたちは保護され、安心した環境になれるとまた人間を信頼してくれるのです。
引っ越して飼えなくなるから捨てる。
多頭飼いでたち行かなくなって捨てる。
そんな人間のエゴには吐き気がします。
その一方で保護活動をする人たちの献身には頭が下がります。
この秋に2匹のわんこを立て続けに見送った友人はまた保護犬を引き取ることを決めました。
私と同年代ですが、そこの保護センターは飼えなくなったら引き取ってくれるそうです。
犬や猫のような動物たち、山から市街地へ降りてくる熊や猪たち。
人間と動物たちとの付き合い方、関係をきちんと考える時期が来ているように思います。
共存していくためには、人間のエゴだけで判断してはいけないことがあるのではないでしょうか。
5年日記の最後の20日間。5年というのは心に一区切りをつけるには十分な時間だったのかもしれません。
またわんことの暮らしができるか、これからのライフスタイルをじっくりと考えてみたいと思います。
※記事中の写真はすべてイメージ
[文/吉元由美 構成/grape編集部]

