「日曜の夕方になると気分が沈む」「月曜日が憂うつと感じる」という方は多いのではないでしょうか。この現象は「サザエさん症候群」や「ブルーマンデー症候群」と呼ばれ、翌日の仕事や学校を思う不安やストレスが原因とされています。近年の研究では、心理的ストレスだけでなく、生活リズムの乱れも関係していることがわかってきました。そこで今回は、「サザエさん症候群」の正体や予防などについて、日本精神神経学会専門医の種市摂子先生に詳しく解説していただきました。

監修医師:
種市 摂子(Dr.Ridente株式会社 代表取締役)
香川大学医学部、名古屋大学医学部大学院卒業。救急医療、脳神経外科診療、睡眠診療、精神科診療などを経て、予防医療を目的に、2008年より産業医サービス提供開始。これまでに、楽天株式会社をはじめ、IT企業、ベンチャー企業、IPOを目指す企業を中心に、650事業所以上を支援、ハラスメントゼロ・休職者ゼロのカスタマーサクセスにつなげている。日本精神神経学会専門医・指導医。Well-being向上委員会委員、日本スポーツ精神医学会会員、日本精神神経学会(精神保健に関する委員会委員)、健康経営アドバイザー、睡眠衛生コンサルタント、ストレングスファインダー認定コーチ、日本産業精神保健学会優秀賞、T-PEC優秀専門医。
「サザエさん症候群」とは? その正体と原因
編集部
はじめに、サザエさん症候群について医学的な視点から解説していただけますか?
種市先生
「サザエさん症候群」とは、日曜の夕方から夜にかけて、翌日の仕事や学校のことを考えると不安や憂うつ感が強まる現象を指します。医学的には「休日の終わりに生じる抑うつ気分」や「社会不安」の一種と考えられています。研究でも、月曜の朝に気分障害や自殺リスクがやや高まる傾向が報告されており、社会的にも注目されています。一時的なストレス反応として軽度であれば問題ありませんが、気分の落ち込みや不眠が2週間以上続く場合は、うつ病などの可能性もあるため専門家への相談が勧められます。
編集部
なぜ休日明けに憂うつ感が出やすいのでしょうか?
種市先生
休日明けの憂うつ感には、生活リズムの乱れが大きく関係しています。休日は夜更かしや朝寝坊をしやすく、その結果、体内時計が後ろにずれてしまいます。このズレが月曜の朝に「社会的時差ぼけ」を引き起こし、頭や体が仕事モードに切り替わりにくくなるのです。こうしたリズムの乱れが、休日明けに気分が沈みやすい一因と考えられます。
編集部
日曜の夜に感じる憂うつ感には、どのような心理的な要因が関係しているのでしょうか?
種市先生
心理的な側面では、翌日へのストレスや不安を先取りして感じる「予期不安」が大きな要因です。休日の終わりに「明日から仕事が始まる」「また人間関係に気を使う」といった思いが浮かぶと、心身が緊張し、気分の落ち込みを招きます。このように、心理的ストレスと生活リズムの乱れが重なることで、日曜夜の憂うつ感がより強く感じられるのです。
「休日の過ごし方」で月曜のメンタルは変えられる?
編集部
「休日ダラダラ過ごすこと」がメンタルに悪影響を及ぼすことはありますか?
種市先生
休日をダラダラ過ごすこと自体は休養になりますが、極端に遅起きや不規則な生活になるとメンタルに悪影響を及ぼすことがあります。研究では、休日と平日の起きる時間が大きく違う人ほど社会的時差ぼけが起こり、抑うつや不安のリスクが高まると報告されています。また、体を動かさない時間が長いと、気分の落ち込みやだるさが出やすく、生活リズムの乱れと相まって翌週の疲労感を増大させます。休養と適度な活動のバランスが心の健康に重要です。
編集部
月曜の憂うつを防ぐために、効果的とされる休日の過ごし方を教えてください。
種市先生
研究では、休日と平日の起床・就寝時間の差を小さく保つことで、社会的時差ぼけを防ぎ、気分の落ち込みが軽減されると示されています。また、適度な運動や日中の自然光を浴びることは体内時計を整え、セロトニンという脳内物質の働きを高め、気分の安定に役立ちます。さらに、休日のうちに小さな予定や楽しみを取り入れると、翌週への切り替えがスムーズになります。休養と活動のバランスが予防のカギです。
編集部
睡眠・食事・運動など、具体的にどのような習慣がメンタルの回復に役立ちますか?
種市先生
メンタル回復には、睡眠・食事・運動の基本習慣が大きく役立ちます。規則正しい睡眠がうつ病や不安の予防に有効とされ、十分な休養が脳の回復を促します。食事面では、魚に含まれるオメガ3脂肪酸や野菜・果物の摂取が抑うつ症状の軽減と関連しています。さらに、週3回程度の有酸素運動はストレスホルモンを減らし、セロトニン分泌を高めて気分を安定させる効果が報告されています。日常の小さな習慣改善が心の回復を支えます。

