あまりにもひどい言葉に、怒りが沸く
家に帰ると、達也はそのまま自室に直行し、布団を被ってふて寝してしまった。夕飯時になっても、達也はリビングに降りてこない。
「あいつはもうダメ。サッカー辞めた方がいい」
夕食のテーブルで、亘は静かにキレていた。いや、静かに見せているだけで、その声には凍り付くような怒りが含まれていた。
「あの程度の負けで逃げるやつに、サッカーやる資格なんてない。サッカーが好きなら、泣いて終わりじゃなくて死ぬ気で練習するだろ。悔しいならさ」
私は黙って、亘の言葉を聞いていた。達也の夕飯の皿は、テーブルの上にポツンと残されたままだった。
「今週の練習で、コーチに辞めるって言うぞ。高い月謝を出して、いちいち送迎して。あんなやつに使う金と時間がもったいねえんだよ」
その言葉を聞いた瞬間、私は頭の中で何かが切れる音を聞いた。夫の暴言は大きくて、自室にいる達也にも確実に聞こえている。いや、亘は聞かせようとしているんだ。こんな親の暴言を聞いた達也はどう思う?わたしは絶対に許せなかった。
達也の気持ちを無視し、自分の期待だけを押し付けた挙句、結果が出ないから「無駄」だと切り捨てる父親。こんなの、絶対におかしい―――。
あとがき:臨界点を超えた「無駄」発言
「逃げる」という行為は、達也にとってこれ以上自分の心を保てない悲鳴でした。そして、亘の「金と時間がもったいない」という言葉は、達也の努力と存在価値を否定する最低な一言です。美香子は、この言葉で亘の根底にあるのは「達也への愛」ではなく、「自分の過去の傷の清算」だと確信します。
達也の繊細さを理解しながらも口をつぐんでいた美香子が、ついに夫の理不尽な期待に対して立ち上がる瞬間です。この怒りは、母親が子の心を守るための、最後の砦と言えるでしょう。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています
記事作成: ゆずプー
(配信元: ママリ)

