③『ピーターのくちぶえ』—ひとつの音から想像を膨らませてみよう
エズラ・ジャック・キーツ 作・絵、木島始訳『ピーターのくちぶえ』偕成社(1974年)
最後にピックアップするのは、3歳からのお子さんに向けた絵本『ピーターのくちぶえ』です。
主人公のピーターは、ペットの犬のウィリーを口笛で呼びたくて、一生懸命に練習します。何度も挑戦するピーターの姿に、子どもから大人まで共感できる作品です。
エズラ・ジャック・キーツ 作・絵、木島始訳『ピーターのくちぶえ』偕成社(1974年)p.14, 15
音の表現に注目すると、口笛を上手に吹けた瞬間だけでなく、いくらがんばっても鳴らない時の様子も、丁寧に描かれていることが分かります。
家に帰る道すがら、ピーターが練習している場面では、「ほっぺたが くたびれるくらい ふきましたが、どうにも なりません」と書かれています。
口笛が鳴らない時はどんな音がするのか、思わず想像したくなるシーンです。
エズラ・ジャック・キーツ 作・絵、木島始訳『ピーターのくちぶえ』偕成社(1974年)p.28, 29
いっぽう、上手に吹けるようになった場面では、両親と犬のウィリーに口笛を披露する姿が描かれています。
ここで注目したいのが、「ふたりとも、ピーターの くちぶえが きにいりました。ウィリーも きにいりました」という文章です。どのような音が鳴っているのか、あえて具体的に書かないことで、読み手のイメージが広がるよう工夫されています。
同じ音をくり返しているのか、それとも好きな楽曲を奏でているのか?登場人物の表情から、想像力を働かせてみましょう。
子どもの内面を新しい視点から捉えた絵本作家のエズラ・ジャック・キーツは、彼らの成長を情緒豊かに描き出しました。小さな音の変化やピーターの気持ちに寄り添いながら、親子で楽しめる一冊です。実際に口笛を吹いたり、「このシーンではどんな音がするかな?」と考えたりしながら、読んでみてくださいね。
まとめ:絵本から広がる音の世界
今回は、聴覚を使って楽しめる絵本をテーマに、3つの作品をご紹介しました。たったひとつの音から聞こえ方のバリエーションが広がったり、感覚的な音楽の描写に触れたりと、お子さんの感性をのびのびと育むきっかけになるでしょう。
身の回りの小さな音に耳を傾けると、生活の中でたくさんの発見があるはずです。音の世界の面白さを、絵本を通してぜひ体感してみましょう!
